Book:平成司法制度改革の研究:理論なき改革はいかに挫折したのか
今年読んだ7冊目は、須網隆夫先生編集にかかる『平成司法改革の研究: 理論なき改革はいかに挫折したのか』
学生が、学校のレポートとかでWikipediaを出典として挙げるという問題は、もう10年近く問題視されてきた。
これに対して裁判所にWikipediaの記事を証拠として提出することはどうか? 一般的には、よく思われない行為とみなされているのではあるまいか?
ところが、MITとアイルランドの大学の研究者が明らかにしたところによれば、裁判官の判断にWikipediaは計り知れない影響力があるというのだ。
Scientists Conclude that Wikipedia Influences Judges’ Legal Reasoning
新年に当たり、ぼちぼちIT化改正がされた民事訴訟法の新条文を整理しておこうと、一条一条再点検していたら、125条という削除されたはずの条文が復活しているのに気がついた。
第百二十五条 所有者不明土地管理命令(民法第二百六十四条の二第一項に規定する所有者不明土地管理命令をいう。以下この項及び次項において同じ。)が発せられたときは、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び当該所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人(同条第四項に規定する所有者不明土地管理人をいう。以下この項及び次項において同じ。)が得た財産(以下この項及び次項において「所有者不明土地等」という。)に関する訴訟手続で当該所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。同項において同じ。)を当事者とするものは、中断する。この場合においては、所有者不明土地管理人は、訴訟手続を受け継ぐことができる。
2 所有者不明土地管理命令が取り消されたときは、所有者不明土地管理人を当事者とする所有者不明土地等に関する訴訟手続は、中断する。この場合においては、所有者不明土地等の所有者は、訴訟手続を受け継がなければならない。
3 第一項の規定は所有者不明建物管理命令(民法第二百六十四条の八第一項に規定する所有者不明建物管理命令をいう。以下この項において同じ。)が発せられた場合について、前項の規定は所有者不明建物管理命令が取り消された場合について準用する。
読めば想像できるように、所有者不明の不動産について処理を迅速化するための法律が令和になってできていて、その中で民事訴訟法も改正がされたのであった。
今年読んだ70冊目は『痴漢を弁護する理由』
これは、弁護士がどのような思いで犯罪を犯した人の弁護をしているのか、そして裁判官や検察官はどのような思いでこれを取り扱い、被告人や被害者やそれらの家族がどのような思いでいるのかを、それぞれの視点から描き出した小説であり、読み応えのある力作であった。
映画監督の想田和弘さんと柏木規与子が挑んだ夫婦別姓訴訟判決(東京地判令和3年4月21日PDF判決全文)は控訴されずに確定したが、その後、婚姻届を再提出するというニュースが現れた。
別姓婚 日本も有効?婚姻届再提出 瀬戸内の夫妻 戸籍に記載求め近く
記事によれば、「東京地裁が昨年4月、判決で婚姻関係を認めた一方、戸籍への記載は具体的な判断をしないまま請求を退けた」ということから、東京で婚姻届を提出し、役所が受け付けないであろうから、改めて家裁に不服申立ての請求をする予定だという。以下、代理人弁護士の弁。
「地裁が婚姻関係を認めている以上、役所が応じなくても、家裁が受理を命じる可能性は十分にある」と予想。「そうなれば、裁判所で婚姻関係が認められながら戸籍に記載できていないという不合理な状態の解消につながる」
なるほど頑張って欲しいところだが、この記事にはかなりミスリードな部分があるので、上記の判決文を読んでみないとよく分からなかった。