2019/05/10

民事執行法の改正法が成立

まだ国会のサイトには出ていないが、5月10日の参議院本会議では以下の議案が可決成立したとのことである。→親権者立ち会いで子引き渡し=改正民事執行法成立

第四 民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)

この改正は、民事執行法については子の引渡し執行についての特則を設けたことと、債務者の財産開示手続を拡充強化したことが大きな柱となっている。

子の引渡しについては、arret:子の引渡しの審判に基づく間接強制が過酷執行として許されないとされた事例で紹介した最高裁決定が出たばかりだが、

動産の引渡し執行に関する規定の借用と間接強制とで賄われていたところを、先行して子の引渡しの強制執行規定を整備したハーグ子奪取条約実施法の規定をお手本に、しかしそこで浮かび上がってきた問題点を考慮した内容で、子の引渡しの直接的な執行を可能とする規定にしたのである。

詳しいことはまた触れる機会もあるだろうが、執行官が子の引渡しに直接的な執行をすることができ、その際には威力も用いることができるとか、間接強制を先行する必要は必ずしもないとか、子を監護している親がいないところで、引渡しを求める親がいれば、引渡執行が可能であるとか、色々と工夫されている。

 

ただし、子の心身に悪影響を及ぼすような執行は当然できず、例えば親にしがみついている子を引っ剥がすような実力行使はもとよりできない。

その意味で、新法の下でも今よりはマシかも知れないが、依然として子の直接的な引渡執行には限界があり、間接強制によらざるを得ないが、これも相手がお金がないというときにどんな実効性があるのかは疑問が残されている。

 

上記のエントリでも書いたように、子の意思を執行段階でも確認するための工夫が必要であると、私は思う。



続きを読む "民事執行法の改正法が成立"

| | コメント (0)

2019/03/03

Book:裁判官は劣化しているのか #岡口基一

今年読んだ13冊目は、裁判官は劣化しているのか、話題の #白ブリーフ判事 岡口基一判事による、最高裁分限裁判以後の第一冊目である。

昨日久しぶりに新宿に行くことがあったので、紀伊国屋で買うことができた。

なにしろ、成城学園駅上の三省堂書店には在庫を入れていないというし、品川駅ナカの書店にもなかった。アマゾンでポチれば早いと思いつつ、昨日まで手に入らなかったが、買ってからは小一時間でスイスイと読める本であった。

続きを読む "Book:裁判官は劣化しているのか #岡口基一"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018/12/20

article:発信者情報開示請求

メディア判例百選 第2版 (別冊ジュリスト241号)に、「プロバイダ責任制限法の『特定電気通信役務提供者』とその責任」と題して、以下の2つの最高裁判決の解説を書いた。

最判平成22年4月8日民集64巻3号676頁
最判平成22年4月13日民集64巻3号758頁

続きを読む "article:発信者情報開示請求"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018/08/08

民訴教材:11年前の確定判決、異例の取り消し…東京高裁

違法な公示送達に基づいて生じた確定判決の効力を否定するというものではあるが、正確な意味がわかりにくい記事である。

東京高裁(中西茂裁判長)が7月、「被告側に裁判が起こされたことを伝えないまま裁判を開いたのは違法」として、2007年8月に確定していた民事訴訟の1審判決を取り消していたことがわかった。1審の裁判所が、被告の住所が判明しているにもかかわらず訴状を郵送せず、提訴されたことを掲示板に貼り出す「公示送達」の手続きを経て審理に入っていたことが問題視された。確定判決が10年以上を経て取り消されるのは異例。

ここだけを読むと、確定判決が取り消されたのだから、再審の訴えが認められたように思える。しかし、その後の記述には、以下のように書かれている。

Temis3


続きを読む "民訴教材:11年前の確定判決、異例の取り消し…東京高裁"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018/06/13

juge:民事裁判官が原本に基づかないで判決言い渡し

裁判官を懲戒請求 民事訴訟で「下書き」のまま判決言い渡す 岐阜地裁

裁判官にしては珍しいケースだと思うのだが、弾劾による罷免というのではなく分限裁判による懲戒となろうか。

岐阜地裁によりますと、山崎裁判官は、名古屋地裁岡崎支部に所属していた2014年4月からことし3月までの間に担当した36件の民事訴訟で、下書き段階の判決文で判決を言い渡していました。 (中略) 山崎裁判官は、「事務作業に追われ、やむをえなくやった」と認めているということです。

続きを読む "juge:民事裁判官が原本に基づかないで判決言い渡し"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018/05/12

論文紹介:吉野夏己「スラップ訴訟と表現の自由」 #SLAPP

吉野夏己「スラップ訴訟と表現の自由」 岡山大学法学会雑誌67巻3=4号431頁

日本における公人の典型とも言える政治家から主にメデイアに対して名誉毀損訴訟が多発している現象に鑑み、アメリカの多くの州で制定されている反スラップ訴訟立法を紹介し、日本での立法の当否を論じる。

筆者が挙げる日本の政治家による名誉毀損責任追及訴訟はごく最近のものに限って22件。そのすべてがスラップ訴訟とは言えないまでも、批判を封じ込めるための訴訟と言わざるを得ない「だろう」と書かれている。

興味深かったのは、最初の東京地判平成13年4月24日判時1767号37頁で、なんと真実性に関して原告の証明妨害を認めて証明責任を転換したというのである。

ちなみにその部分の判示は以下の通りであり、判決文中で証明妨害→証明責任転換と明示されているわけではない。
注によれば、判例時報のコメント欄にはそのように書かれているようなので、担当裁判官がそのような意図の下に、しかし以下のような判示にとどめた(あるいは部長に赤を入れられた)ということなのかもしれない。

Saiban_small_no_gavel


続きを読む "論文紹介:吉野夏己「スラップ訴訟と表現の自由」 #SLAPP"

| | コメント (0) | トラックバック (0)