France司法官と弁護士との関係シンポ
3月23日に破毀院で開催されたJournée nationale de la relation magistrat-avocatの第3回シンポは、「拡張された法律家:明日のための倫理とは?」というテーマで、具体的には司法におけるAIの利用に関して様々な立場からの発言があった。
シンポジウムは、企画趣旨、基調講演2つ、そしてパネルディスカッション2つという構成で行われた。
3月23日に破毀院で開催されたJournée nationale de la relation magistrat-avocatの第3回シンポは、「拡張された法律家:明日のための倫理とは?」というテーマで、具体的には司法におけるAIの利用に関して様々な立場からの発言があった。
シンポジウムは、企画趣旨、基調講演2つ、そしてパネルディスカッション2つという構成で行われた。
法務省の民事判決情報データベース化検討会は、2022年10月以来、約2年間の検討結果をまとめた報告書を公表した。(検討会のページ)
この検討会と、それ以前に2020年3月から日弁連法務研究財団が行ってきたプロジェクトチームの議論にも加わってきた私としては、ようやく一つまとまってホッとするとともに、これからの法制化の行方と現実化の行く末をドキドキしながら見守ることになる。
さて、この報告書の内容であるが、民事判決情報データベース化というのは、要するに2025年か26年から始まる民事訴訟のIT化の結果として判決書がすべて電子判決書となることから、この判決データを全て、特定の民間機関に渡し、そこで仮名化処理をした上で、判決データの利用者に有償で提供するというものである。
従来は、各裁判所が公開に値すると判断した判決書を、一方では裁判所WEBに自ら仮名化処理をして掲載するとともに、紙媒体の判決書を判例集出版社やデータベース会社に回覧し、その各社が掲載を決定した判決を各社において仮名化処理をした上で、判例集出版社は解説やコメントを付して雑誌に掲載し、データベース会社は若干の参考情報を付加した上でデータベースに登載していた。
我々一般利用者は、裁判所WEBの情報を見るか、紙媒体判例集を見るか、はたまた契約しているデータベースを見るかによって、裁判例にアクセスすることができた。ただし、その数は全裁判例のごく一部にとどまり、年間1万件から2万件程度しか公開されない。令和4年の全終局判決22万件のうちの5%から10%程度である。
今後、この報告書の提案が実現すると、毎年20万から30万件の「民事判決」が全て、一つの民間機関の下で仮名化処理され、その利用者に有償提供されることになる。
この「全て」という部分と、一元的に仮名化するという2点が、この報告書提案のポイントである。
学生が、学校のレポートとかでWikipediaを出典として挙げるという問題は、もう10年近く問題視されてきた。
これに対して裁判所にWikipediaの記事を証拠として提出することはどうか? 一般的には、よく思われない行為とみなされているのではあるまいか?
ところが、MITとアイルランドの大学の研究者が明らかにしたところによれば、裁判官の判断にWikipediaは計り知れない影響力があるというのだ。
Scientists Conclude that Wikipedia Influences Judges’ Legal Reasoning
報道によれば、茅ヶ崎での殺人事件の犯人として出頭し、逮捕された被疑者が、次のように供述しているという。
神奈川県茅ケ崎市で男性を刺殺したとして逮捕された男が「裁判記録で住所を知った」との趣旨の供述をしたことが6日、捜査関係者への取材で分かった。男は家賃を滞納して物件を所有していた男性に提訴されていた。
身柄拘束中の警察発表のことなので、真偽は不明だが、仮に報じられているとおりだとすると、訴訟記録や判決書の公開に対する大きな向かい風となる可能性のある出来事で、憂慮せざるを得ない。
令和4年法律第48号による改正(この改正法を私は民訴IT化法と呼んでいる)には、100ヵ条をはるかに超える民事訴訟法の条文と見出しの改正があり、その中には条文番号も変更になるものが少しだけ含まれているが、それはごく僅かであった。
しかし、複雑なのは、民訴IT化法の1条による当事者の氏名住所の秘匿に関する規定と、2条によるIT化を中心とする規定とが分かれており、しかも1条で改正された条文をさらに2条で改正するという二段構えとなっていること、そしてそれとは別に、附則により施行日がさらに分けられていることだ。
附則(令和4年5月25日)1条には以下のように民事訴訟法本体の施行日がずれて規定されている。
民訴IT化法1条の規定→公布から9ヶ月以内(附則1条2号)
民訴IT化法2条のうち民訴89条の見出しと同条2項と3項を加える規定および173条3項を加える規定→公布から1年以内(附則1条3号)
その他→公布から4年以内(附則1条本文)
そして、この度、附則1条2号については令和5年2月20日施行、附則1条3号については令和5年3月1日施行ということが明らかになった(令和4年政令384号)
その他の規定は、依然として令和8年5月までのいつかに施行となっている。
今回の出張の目的の一つは、新設されたパリの一審裁判所での審理のあり方を観察してくることであった。
建物自体が、コロナ直前にかつてのコンシェルジュリーとして用いられていたシテ島のPalais de justiceから、一審裁判所が新たなPalais de justiceに移転されていて、訪問しそびれたままコロナで渡航すら難しくなっていたが、今回ようやくその念願を果たすことができた。
場所はパリの北北西のペリフェリック上にあるPorte de Clichyにあり、地下鉄では13番と14番に駅があるほか、トラム3bの停留所も近い。
威容を誇る高さの建物だが、一審裁判所に用いられているのは、手前に張り出している6階建ての部分で、そこに各種の法廷がある。
一審裁判所と言っているのは、2020年から登場したTribunal judiciaireのことで、従来の簡裁と地裁が統合されてできたものだ。
そして当然ながら少額だったり日本で言えば家事審判になるような事件が多数係属して審理されるので、一人法廷が数多く設置されている。6階建ての中に、ガラス張りが大胆に取り入れられた開放的な、しかし狭い法廷が極めて多く配置されているのだ。
そして事件の表示は、各法廷の前に設置されたスクリーンに表示され、タブレット端末のように手でスクロールして見ることになっている。
ただし、そのスクロールはどうもうまく動かなかった。弁護士も動かそうとして舌打ちして苛立っていたので、例によって先進的だが使いにくいシステムを入れてしまったということなのだろう。
空いている法廷を探してうろつきまわっていると、機関銃を持った警察官に呼び止められてどこに行くのか聞かれたから、事件関係者ではなくて傍聴希望者だというと、親切に「この階の法廷は特に記載がない限り自由に見て良いから頑張って」と送り出された。
ローライブラリアン研究会編で、高名な同僚である指宿信教授も初版に関与していた本の第2版である。
多数の著者が関わっていて、代表者となった岩隈道洋先生はさぞ大変だったのではなかろうか。
ちなみに、成城大学の法情報資料室の金澤敬子さんも分担執筆者となっている。