2025/04/17

UK最高裁によるトランスジェンダーと平等権

 UK最高裁は2025年4月16日、トランスジェンダーの人が性別認定証明書により認められた性として扱われることを2010年平等法の元で保障されるか、言い換えると同法の男性、女性、性別という概念は性別認定証明書により認められた性を含むのか、それとも生物学的な性に限るのかという問題について、生物学的な性に限るとの解釈を示して、性別認定証明書により認められた性を含むとするスコットランド政府のガイドラインを違法と判断した。

判決文PDF

Justicepolonaise  以下、事実関係と、判決文のごく簡単な要約を示す。なお、判決自身も要約をしており(265)、また裁判所としてプレスリリースにまとめた文書があるので、詳しくはそちらを参照されたい。

 問題は、スコットランド議会が制定したGender Representation on Public Boards (Scotland) Act 2018の規定上、「女性」の意味にトランスジェンダーで女性となった人(以下MtoFともいう)が含まれるかという解釈問題で、スコットランド政府は当初幅広く女性と認識される人と解釈していたが、これに今回の訴訟原告でもある女性団体(For Women Scotland Ltd)が異議を申し立てて、スコットランドの高等法院(Court of Session)のInner House(控訴審を担当)がそのような解釈の下での法律はスコットランドの立法管轄権を逸脱するとして無効とした。
 そこでスコットランド政府は、「女性」の意味がthe Equality Act 2010(2010年平等法)での「女性」と同様であり、その中にはGender Recognition Act 2004(2004年性別認定法)が設けた性別再認定証明書(GRC)を有する女性(つまり公的に認められたMtoF)も含まれるとのガイドラインを制定した。
 本件は、このガイドラインの解釈が違法であることの確認をスコットランドの女性団体が求めて提訴したものである。

 これについて、スコットランド高等法院は一審も控訴審も、訴えを棄却し、スコットランド政府の解釈が適法であると認めた。そこでUKの最高裁に上訴がなされた。

 

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2025/04/12

イタリア・トリノでロンブローゾ博物館を見る

Img_8392トリノ大学でのワークショップに参加したついでに、同大学に在籍されていたチェーザレ・ロンブローゾの博物館を見学した。

法学を学んだ者なら誰でも耳にしたことのある、インパクトのある名前で、犯罪者には身体的特徴などから生来的要因があるという生来的犯罪者説を唱えたことで有名である。

 

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2023/06/22

Book:オーストラリア倒産法

金春先生より『オーストラリア倒産法』をご恵贈頂いたので、ご紹介。


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2023/06/21

Book:柳景子著『契約における「交渉力」格差の意義』

柳景子先生より、『契約における「交渉力」格差の意義』をご恵贈いただいたので、一読し、感想を書き留めておく。


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2023/01/09

LAWCLERK: フリーランスの弁護士

「私、失敗しないので」という決め台詞で有名な大門未知子こと、米倉涼子が、似たようなコンセプトを狙って元弁護士として登場するドラマが「リーガルV」だったが、それよりもむしろドクターXに近い存在の弁護士が、アメリカでは台頭してきているらしい。

それが、LAWCLERKという会社が提供する派遣弁護士。

 

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2023/01/08

Wikipediaの記事を裁判に証拠として提出することの効果

学生が、学校のレポートとかでWikipediaを出典として挙げるという問題は、もう10年近く問題視されてきた。

これに対して裁判所にWikipediaの記事を証拠として提出することはどうか? 一般的には、よく思われない行為とみなされているのではあるまいか?

ところが、MITとアイルランドの大学の研究者が明らかにしたところによれば、裁判官の判断にWikipediaは計り知れない影響力があるというのだ。

Scientists Conclude that Wikipedia Influences Judges’ Legal Reasoning

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2022/09/16

book:世界裁判所放浪記、読了

今年読んだ57冊目は「世界裁判所放浪記

 

原口侑子先生が、文字通り世界中の124カ国を訪問して裁判所を見聞した旅行記である。

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2022/08/18

Book:スイス民事訴訟法概論

松村和徳先生と吉田純平先生の共著による大著『スイス民事訴訟法概論』を頂いたのでご紹介。

 

本格的な体系書であり、その歴史から日本の民事訴訟法の体系に近い形でスイス法が整理され、読みやすい。 

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2021/04/29

Book:アメリカ人が驚く日本法

今年読んだ25冊目は、樋口範雄先生のアメリカ人が驚く日本法

 

アメリカ私法と日本の私法との比較検討である。 

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2020/11/07

現職大統領のクーデタ

トランプ大統領が、選挙の不正を証拠もなしに言い募るというのは、クーデタに等しいし、支持派にそのようにアピールして支持者のデモというか開票作業の妨害行為を行わせるとなるともうクーデタそのものと言ってもよい。

トランプ大統領が票の集計などをめぐって不正が行われていると主張していることを受けて、ソーシャルメディア上ではこうした言説が急速に広まっています。

このうち、4日に立ち上げられた「ストップ・ザ・スティール」、「選挙を盗むのはやめろ」というフェイスブックのページでは、中西部ミシガン州デトロイトの開票所に市民が詰めかけ、「開票作業をやめろ」と声をあげる映像が投稿され、「バイデン氏は票を盗もうとしている」とか「公正なやり方ではない」などと書き込まれました。

このようなトランプの言動について、かねてからツイッターはブレーキをかけているし、FBも同様である。加えて大手のテレビ局がトランプ大統領の記者会見中継を途中で打ち切るという形で追随した。

トランプ大統領 不正の主張 SNS上で急速に広まる 

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