2024/03/12

Arret:共通義務確認訴訟では過失相殺が問題になる事案でも支配性に欠けるものではないとされた事例

最判令和6年3月12日PDF判決全文

消費者裁判手続特例法2条4号所定の共通義務確認の訴えについて同法3条4項にいう「簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるとき」に該当するとした原審の判断に違法があるとされた事例

事案は、仮想通貨で儲かるという触れ込みの情報商材をネットで販売していたワンメッセージという会社と、その代表者が、(1)仮想通貨バイブルというDVDと(2)VIPクラスという商品を付加したもの、そして(3)パルテノンコースを数千人もの人々に売りつけたというもので、それらは「虚偽又は実際とは著しくかけ離れた誇大な効果を強調した説明」で売却されたのであるから不法行為に該当すると主張し、特定適格消費者団体の消費者機構日本(COJ)が多数の購入者たる消費者に共通する損害賠償義務の存在を確認するよう求める訴えを提起した。

これに対して第一審は、購入した消費者の中には仮想通貨取引に経験のあるものなど投資経験が様々であるので、本件のような虚偽または誇大な効果を強調した説明を信じて金銭を支払うということについて過失がありうるし、その過失の程度は被害者間で様々であるから、簡易確定手続で一律に決めることはできないし、またそもそも説明によって誤信したという因果関係についても様々であって一律に判断できない以上、消費者裁判手続特例法3条4項の要件を満たさないのであり、訴えは不適法であるとした。この判断は控訴審でも支持され、控訴棄却となった。

これに対してCOJが上告受理申立てを行い、受理されて先日弁論が開かれ、本日3/12に判決が言い渡された。

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2024/01/17

Arret:欧州人権裁判所がフランスに対し、破毀院判事3名の利益相反で公正な裁判を受ける権利を侵害したと有責判決

欧州人権裁判所2023年12月14日判決(ジャーナリスト組合連合対フランス)n° 41236/18
Cedh

Dalloz Etudiant, Actualitéの2024年1月15日の記事によると、フランス破毀院(最高裁)の判事3名が、長年報酬を得て研修など行ってきた出版社を当事者とする労働紛争について判決に加わったことで、公正な司法の原則を損なったと判断された。

 

 

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2023/12/27

jugement:大川原化工機の冤罪事件に国賠請求認容判決

東京地判令和5年12月27日

NHK報道記事「不正輸出めぐるえん罪事件 捜査は違法 国と都に賠償命じる判決」

不正輸出の疑いで逮捕されて1年間近く勾留されたあと、無実が明らかになった会社の社長などが国と東京都に5億円余りの賠償を求めた裁判で、東京地方裁判所は検察と警視庁の捜査の違法性を認め、国と東京都に賠償を命じる判決を言い渡しました。

横浜市の化学機械メーカー「大川原化工機」の大川原正明社長など幹部3人は2020年、軍事転用が可能な機械を中国などに不正に輸出した疑いで逮捕、起訴されました。(中略)

27日の判決で東京地方裁判所の桃崎剛裁判長は、検察と警視庁の捜査の違法性を認め、国と東京都に賠償を命じました。

冤罪事件でも、刑事補償は認められても過失がなければ賠償は認められない。

しかし、この裁判では、検察の起訴が違法と判断され、国家賠償請求が認容された。

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2023/10/24

arret:オノアクト贈収賄事件に高裁も有罪判決

三重大学病院でオノアクトを多数発注するかわりに寄付をさせたという件が、高裁でも第三者供賄と詐欺で有罪判決となった。

(第三者供賄)
刑法 第百九十七条の二 公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。

北國新聞:三重大元教授、二審も有罪
薬剤巡る汚職、名古屋高裁

NHK:三重大病院元教授に2審も執行猶予付き有罪判決 名古屋高裁

 

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2023/08/08

arret: 婚姻費用分担請求に関する最高裁の判断例

最決令和5年5月17日決定全文PDF

 事案は、婚姻前に二股かけていた女性が、その一方の結婚し、その二ヶ月後に出産した子供の親は結婚しなかった方の男性だったという事例で、しかしそのことは夫には知られずに2人の子として出生届を出した。その後、5年後の令和元年10月に、妻の方から離婚を切り出して別居し、子は妻が監護しているところ、夫が父子関係を疑ってDNA鑑定を行ったので、上記の事実が明るみに出た。

 そこで、夫から妻と子に父子関係不存在確認と離婚を求める調停を提起し、これは不調に終わった。その後、訴訟に至っている。他方妻から夫に対して婚姻費用の分担請求調停が出され、これも不調に終わって審判に移行した。

 原々審は父子関係が不存在だという認定のもとで婚姻費用分担請求は信義則に反するとして却下。

 原審は父子関係の存否が訴訟で決せられるまでは、扶養義務を免れないとして、婚姻費用月額4万円の支払いを命じた。

 妻側が許可抗告に及び、最高裁の判断が示されることになった。なお、原審決定後に、夫の子に対する父子関係不存在確認請求は認容され確定している。

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2023/03/24

arret:孤立出産した外国人技能実習生の死体遺棄を無罪とした最高裁判決

最判令和5年3月24日判決全文PDF

 技能実習生の被告人女性が、双子の赤ちゃんを自室で出産し、まもなく亡くなった双子をタオルでくるんでダンボール箱に入れ、棚の上に保管していたところ、その翌日に検査を受けて出産したことを話したため知られることとなったという事案において、第一審は不作為による死体遺棄、原審は外から死体があるとわからない状態にしたことで隠匿したものと評価し、死体遺棄の成立を認めた。

 これに対する上告審が、逆転無罪判決を下したのが本判決である。

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2022/10/28

jugement:コンサート出入り禁止措置の無効確認訴訟

コンサートのいわゆる出禁を言い渡されたのに対して、その無効確認の訴えを提起したという事例があった。

東京地判令和3年10月12日WLJ(令和元年(ワ)33942号)

当然ながら、訴えの利益が問題となる。確認訴訟だけに、原告と被告との間に法的な紛争があり、原告が確認対象とする訴訟物について既判力をもって判断することが原告被告間の紛争の抜本的な解決に有効適切であることと言えるかどうかが問題である。

コンサートの出禁というのが、この事例では、被告がマネージするグループの行うもので、反復継続して行われ、そのグループのファンが比較的小規模な会場でリピーター的に入場しているものであるから、そのファンであれば今後来てくれるなというのはかなりのダメージであろう。

Twitterの中毒患者がアカウント凍結されるようなものかもしれない。

それで、その措置の無効確認訴訟を提起したというのだが、果たして確認の利益は認められるのか? 裁判所は取り上げてくれるのか?

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2022/07/23

jugement:不同意性交によるPTSD被害について国賠が認められた事例

長崎地判令和4年5月30日PDF判決原本

長崎市役所の原爆被爆対策部長が、平成19年8月における民主党政権の衆議院議長の長崎原爆忌出席の取材をしようとした女性記者を電話で呼出してホテルで同意なき性交に及び、PTSDにさせたということで、国家賠償が認められた事例。

 

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2022/06/24

arrêt:犯罪歴のツイートを削除せよとの請求がツイッター社に対して認められた事例

最判令和4年6月24日判決全文PDF

旅館の女子風呂脱衣場に立ち入ったとして建造物侵入により逮捕され、罰金を支払った上告人は、その逮捕事実の報道記事を引用したツイートの削除を求めて、ツイッター社に対して訴えを提起した。

第一審は請求を認容したが、控訴審=原審は、グーグルに対する検索結果のプライバシー侵害を理由とする削除事件で最高裁が示した「明らか」基準といわれる準則に則って、プライバシーの利益と削除をしない利益の考量でプライバシーの利益が優越することが明らかとは言えないとして、請求を棄却した。

最高裁は、以下のように判断した(改行、引用裁判例省略などは引用者)。

個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益は、法的保護の対象となるというべきであり、このような人格的価値を侵害された者は、人格権に基づき、加害者に対し、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができるものと解される。

そして、ツイッターが、その利用者に対し、情報発信の場やツイートの中から必要な情報を入手する手段を提供するなどしていることを踏まえると、上告人が、本件各ツイートにより上告人のプライバシーが侵害されたとして、ツイッターを運営して本件各ツイート を一般の閲覧に供し続ける被上告人に対し、人格権に基づき、本件各ツイートの削除を求めることができるか否かは、本件事実の性質及び内容、本件各ツイートによ って本件事実が伝達される範囲と上告人が被る具体的被害の程度、上告人の社会的地位や影響力、本件各ツイートの目的や意義、本件各ツイートがされた時の社会的状況とその後の変化など、上告人の本件事実を公表されない法的利益と本件各ツイ ートを一般の閲覧に供し続ける理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので、その結果、上告人の本件事実を公表されない法的利益が本件各ツイートを一般の閲覧に供し続ける理由に優越する場合には、本件各ツイートの削除を求めること ができるものと解するのが相当である。

原審は、上告人が被上告人に対して本件各ツイートの削除を求めることができるのは、上告人の本件事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合に限られるとするが、被上告人がツイッターの利用者に提供しているサービスの内容やツイッターの利用の実態等を考慮しても、そのように解することはできない。

 

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arrêt:民訴教材:死者間の親子関係確認の利益が相続関係から認められた事例

最判令和4年6月24日判決全文PDF

上告人(原告)は、戸籍上の叔父と自己の祖父母との親子関係不存在確認を求め、検察官を被告として訴えを提起した。既に叔父も祖父母も故人であり、原審は訴えの利益がないとして却下した。

さて最高裁は?

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