cinema:On vous croit
今年見た16本目の映画は、ベルギー映画「On vous croit」(みんなあなたを信じます)
映画評にカフカ的世界というのがあったが、まさにそれだ。
二人の子どもを連れた母親がベルギーの少年裁判所にやってきた。別居歴2年の夫から、子どもに会わせるようにという(日本で言うなら家事審判に当たる)訴えを提起され、弁護士とともに出廷したのだ。
姉はともかく、小学生高学年くらいの弟は、裁判所に行きたがらず、なだめすかしながらなんとか裁判所に来た彼女たち。まずは、子どもたちが子ども代理人として任命された弁護士の面接を受け、さらに子ども代理人とともに裁判官の面接を受ける。
子ども代理人の弁護士が子どもから目を離したと知り母親はパニックになるが、なんとか気を落ち着かせる。
そして夫婦とそれぞれの代理人弁護士、そして子ども代理人が少年裁判官の前で弁論を行う。
まず夫側、つまり申立人代理人の女性弁護士が、二年間別居中に夫が子供に会わせてもらえないことの理不尽さをこれでもか、これでもかと述べ立てる。聴いている妻は、その弁論に精神的に傷つけられていく。子どもが夫に会いたくないと言っているのは、一緒に住んでいる妻が夫を嫌っているからという趣旨の言及には、妻が耐えきれずに口を挟む場面もある。
次に妻側代理人の女性弁護士が、夫と妻との不仲が修復不可能なこと、夫が子どもたちに嫌われていて、子どもたちが激しく拒絶していること、それにも拘らず夫が妻につきまとい行為を繰り返し、生活が脅かされ、この裁判を起こされること自体も妻を傷つける行為であることを弁論した。その中でははっきりした事実が述べられているわけではないが、夫に対しては妻から刑事告訴がされており、夫は刑事裁判の被告人になっていることなども説明された。
その次が子ども代理人の男性弁護士の弁論で、子どもたちの立場を代弁するはずの彼は、むしろ自分の子供時代の経験をもとに、両親と離れているのが子どもたちの精神的不安定の原因で、特に父親と引き離されていることが子どもたちを傷つけているのだという。妻は必死で涙をこらえる。
法律家たちの弁論の後は、夫の本人陳述で、自分と子どもたちとの間には何の問題もないこと、それにも拘らず2年もの間会わせてもらえないことで子どもたちは寂しがっている、刑事告訴されるようなことは何一つしていないし、子どもと会っても何もしないことを誓うという。
そしてようやく妻の本人陳述。最初は、いま子どもたちと住んでいて、子どもたちは難しい年頃だけど一緒に仲良く暮らしていて問題はないと強調する。そして夫と子どもたちとの関係は、ティーンエイジャーの姉の方は夫を嫌っており、はっきり拒絶していること、そして弟は、夫と近づくだけで恐怖に震えること、それは夫が弟に性的虐待を加えたからに他ならないからであると説明する。性的虐待の事実は口の重い弟から少しずつ聞かされ、具体的にこんなことをされた、あんなことをされたと次第にエスカレートする行為が語られ、説明する妻も涙を必死で抑えながら説明する。そんな弟の精神状態に、夫側代理人が妻のせいだと何の根拠が会っていうのかと非難、さらに無責任にも父親と引き離されたのが精神的不安定の原因などという子ども代理人の主張の空疎さを非難して、夫との別居をなんとしても守ると陳述した。
弁論を閉じた裁判官は決定を翌月3日に言い渡すと告げて閉廷した。
終了後、控室にいた妻と子どもたちのもとに夫が乱入し、弟にシュノーケルをプレゼントしたが、弟はそれを投げ捨てる。そして妻はシュノーケルをもって夫の後を追い、トイレの中で夫の口にシュノーケルを突き立てたのが、夫の行為の暗示になっていたのであろう。
弁護士とともに帰りに軽食を食べているところでは、子ども代理人と裁判官の聴取を録音していた姉が、それを披露。その最後の言葉がOn vous croit(私達はあなた達を信じます)だった。
なお、ポワチエは女性に対する暴力廃絶月間の催し物を各所で開いており、この映画もその一環だ。25日には、映画上映の後に市民討論会も開かれるという。
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