夫婦別姓選択制は戸籍制度の破壊?
同族制が表象された「戸籍」は、戦前の戸籍制度がそれに近かったとは思う。戦前は大家族制で家の財産を表象していたのが戸籍だったが、戦後の夫婦親子の単位で戸籍を作り、夫婦財産は別産制が原則となり、均分相続となった制度の下では、かなり徹底して破壊された。唯一残ったのが夫婦同姓強制なので、いわば大家族制的戸籍制度の残りカス(=残滓)が夫婦同姓強制制度というわけだ。そう考えると、同族制をイメージしている人の「戸籍」観がそこにこだわるのもわからないわけではない。
しかし、所詮はアナクロニズムというか、もう80年前に決着のついた話で、今はその残滓を取り除くかどうかが議論されている。
そこで同族制的「戸籍」の残滓にこだわっている哀れな姿を晒しているのが、夫婦同姓強制維持派というわけだ。
そういう人たちにとって、現実の戸籍の法制度がどう変わろうと、日本古来の同族制的秩序は変わりません(キリッ)と胸を張れば良いのにとも思うが、それはそれで困りものだったりする。要するに、妻を迎えた時に、夫側の親族、そして夫自身も、当然に「嫁」としてサークルの新入部員みたいな扱いができなくなっちゃうからな。
そこが本当の問題ではあるのだけど、いずれにしてもその問題は戸籍法が夫婦別姓を認めたところで変わりはない。多分、そういう目で「嫁」を見る人は、「姓が違っても嫁は嫁です(キリッ)」となるだけだろう。だから法制度の問題とは関係ない。
(結論)日本古来の同族制イメージはともかく、現実の戸籍制度の問題である夫婦別姓選択制に反対するのはやめてほしい。
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