Book:アオキくんはいつもナス味噌
今年読んだ6冊目は、一橋大学教授の青木人志先生が出された自伝的エッセイ集ともいうべき『アオキくんはいつもナス味噌』
1961年に生まれ、私大勤務も国立大勤務も経験された法学部の先生ということで、私とほぼほぼ同じ条件の研究者であり、最後までたいへん共感を持って読んだ。
文中にも出てくる「シラケ世代」というのは、私の記憶ではやや上の世代(2、3歳ほど上)に与えられたレッテルで、私がシラケ世代と言われたのは高校時代だったように思う。それでも、私たちの世代に対するレッテルとしてぴったりで、いわゆる全共闘世代やその余韻が強く残る先輩たちからすると、ノンポリという言葉が使われなくなるほどに政治的なパッションがないのが普通に見える、その意味でシラケている世代というわけである。もちろん、ゲバ棒とヘルメットでデモに参加する行動には出なくとも、実存主義の申し子さながらに悩み戸惑うことは普通にあり、シラケと言われるほどに無気力無関心だったわけではない。学生運動のようなわかりやすい単一目標に向けた直接行動に全員が立ち上がるというような構図に、背を向けたり、斜めに構えたりしがちな世代ということなのかもしれない。
ということで、同世代だからといって同じ考えの持ち主というわけではもちろんないが、取り上げられる話題とか出来事が、東京教育大学の解体と筑波大学設立とか、たほいやとか、人間の改札とか、青焼きコピーとか、留学経験があって今日のゼミはビールを飲みながらと言い出す教授とか、東日本大震災当日に如水会館で行ったスピーチのフォークソングへの見方とか、一つ一つが同世代感を刺激するのである。さらには、青木人志先生を直接存じ上げないのだが、文中に出てくるフランス刑法研究会参加者には直接の知り合いが少なくとも二人いるし、なによりも白取祐司先生のお名前も出てきた。白取先生こそは、公私ともに今日までお世話になりっぱなしの大学院の先輩なのである。
その他にも、大学の先生たちの行動様式や学位取得のあり方、それから一橋大学法学部がゼミを2年持ち上がりで行い卒論を必修としているという点で法学部的にはユニークなのだが、私の最初の勤務校はその一橋と関係が深い小樽商大で、ほぼ一橋方式を採用していたこととか、分かり味が強い。
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