Jugement:原発事故に関する東電取締役等の任務懈怠により東電に与えた損害の賠償を命じた株主代表訴訟
東京地判令和4年7月13日(PDF判決全文)裁判所判例Watch
東電の取締役等4名に対して、13兆3210億円の損害賠償を東京電力に対して支払えとの主文である。
前提事実だけでも82頁、判決文全体は別紙を除いても413頁もある。
任務懈怠を認めた部分のキモを引用すると、
被告らは「明治三陸試計算結果と同様の津波が福島第一原発1号機〜4号機に襲来し、当該津波によって全交流電源及び主な直流電源喪失といった過酷事故が発生する可能性があったこと・・・をいずれも認識し、又は容易に認識し得たのであるから、・・・いわば弥縫策としての津波対策を速やかに実施するよう指示等をすべき取締役としての善管注意義務があったのに、そのような指示等をしなかった任務懈怠があった」
「東京電力においては、本件事故前、万が一にも過酷事故を起こさないよう、最新の科学的知見を踏まえて、いかなる対策が可能か、またそのリスクの度合いに応じて、いかにそれをできるだけ早く講ずるかという、原子力事業者として、当然に、また極めて厳しく求められる安全確保の意識に基づいて行動するのではなく、むしろ、ほぼ一貫して、規制当局である保安院等との関係で、自らが得ている情報を保安院等に明らかにすることなく・・・、いかにできるだけ現状維持できるか、そのために、有識者の意見のうち都合の良い部分をいかにして利用し、また、都合の悪い部分をいかにして無視ないし顕在化しないようにするかということに腐心してきた・・・。」
「津波対策の担当部署でさえもが、もはや現状維持ができないとして、本格的に津波対策を講ずることを具申しても、被告らにおいては、担当部署の意見を容れることなく、さらに自分たちがその審議に実質的に関与することができる外部の団体を用いて波源等の検討を続けることにした上、その間、一切の津波対策を講じなかった」
「原子力事業者及びその取締役として、本件事故の前 後で変わることなく求められている安全意識や責任感が、根本的に欠如してい たものといわざるを得ない。」
東京地裁は、まさしく、東電の四人の取締役たちを断罪したわけだ。
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