Book:極楽征夷大将軍
今年読んだ17冊目は、直木賞受賞作品である『極楽征夷大将軍』
足利尊氏の一代記なのだが、視点は弟直義と執事高師直の二人が交代で語り手の地位につくという仕組みで、主人公を身近な側近の印象により描き出すという手法だ。
で、この小説で描き出される主人公・尊氏は、誠に興味深い人格で、怠惰で投げやりな人物ながら人たらしで熱狂的な信者を次々と獲得し、また兵法の勉強は怠けるくせに戦の采配は軍神の如き強さを発揮するという、身近で支える二人からするとなんでこんな奴がと思いつつも旗印にせざるを得ない人物となっている。
ストーリーは史実によるのでネタバレもないが、高師直と弟・直義の確執が全体を通じてのテーマであるが、師直が殺されて以降の直義の生き方は、残念ながらあまり面白くない。それまで、直義と師直のそれぞれの視点で描かれる尊氏があまりにも魅力的なので、その小説の型が崩れた後の最後の2割ほどは、文字を追うのが苦痛なほどであった。それまでは、二段組の本を実に楽しみながら読めたのだが。
ともあれ、足利尊氏についてもっと知りたくなること必定である。
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