ChatGPTをゼミの発表に使った事例
使っちゃいかん、いや、使ってもいいけど、その回答をそのまま自分の解答として発表してはいけない。
ついに、ゼミの報告にChatGPTで出てきた内容をそのまま自分の発表内容として使用する学生が現れたので、本日はその学生にみんなの前でChatGPTにどういう質問をしてどういう答えが出てきたのかを説明させ、その内容がデタラメであること、ほかにも平気でデタラメを答えるということを例によって「町村泰貴って誰か」という質問をさせてみて答を読み上げさせた。
例によって、町村泰貴というのは千葉選出の自民党の衆議院議員ですとデタラメを答えるので、学生たちがこれは信用できんぞと印象深く思ってくれれば良いと思う。この画像のようにデタラメはデタラメでもそのときによって違う答えが出てくるので、余計に始末が悪いとも言える。
さて、大学の先生というのは新しもの好きだったり、知的な所産、それもプロトタイプ的で明るい未来に挑戦する系のものについては、どんなにできが悪くても一概には否定しないという習性を持っており、デタラメ回答がたくさん出てきて現段階で評価するならとんだ欠陥品ともいうべきChatGPTでも、学生の勉強に使うなとは中々言わない。
むしろ、その限界を踏まえつつ、使えるようになるのが良いくらいのことを言いたがるのだ。私もその一人なので、上記学生の態度もムゲに叱りつけるようなことはしない。最初は怒られていると思ったらしくゴメンナサイと言っていたが、そうではなく、やはり使える限りのツールとしては使っていくことがむしろ望ましい。
例えば、私自身が、ニュースなどでGisèle Halimiという名前を聞いて、恥ずかしながら知らなかったので、ChatGPT先生に聞いてみた。
この答が正確かどうかは、他の資料にあたってみれば分かる。そして現に他のネット上の資料を見れば、正確な回答であることが分かった。
またこのブログでも前に取り上げたように、天安門事件とは何かということには割合正確な答を出してくれた。その後中国政府の妨害工作があるのではないかと心配されるが、今のところそういうことは起きていないようだ。
というわけで、調べ物にお手軽に使えそうな感じだし、しかも使えない場合ばかりではないというのが逆に仇となって、無邪気に信じてしまったり、あるいはとりあえず得た回答をまるごと何かの提出物に使ったりという安直な対応に流れがちなのである。
今のところ、学生たちも、まだ面白半分で使ってみて「これいいんじゃね、一応筋が通っているし」的なノリであって、何か重大な帰結につながるような、間違いだったら重大な不利益が自らに発生するような場面で、ChatGPTの回答をまるごと使うほどに信じているわけではなさそうである。残念ながらゼミの報告はそれが間違いだったら重大な不利益が自らに発生する場面とは思われていないという問題はあるにせよだ。
そして、ゼミの報告にせよ、授業の小レポートにせよ、タネ本からまるごと写して提出する→ネット記事からまるごと写して提出する→ChatGPTの回答をまるごと写して提出する、というようなやり方でやり過ごせていけば、全く何も身につかない無駄な時間が過ぎていくばかりである。
タネ本であれ、ネット記事であれ、はたまたChatGPTの回答であれ、安直ではあっても情報には違いない。そして信頼性という点では五十歩百歩なのだが、自然科学問題と異なり法学問題はそれらの正確性を実験などで確かめることはできない。他の資料、法令データや判例、そして定評ある出版物によって、その裏付け調査を行い、安直に集めた情報の当否を明らかにしていくしかない。
そんなことやるくらいだったら、最初から教科書を見ればいいんじゃないかって? そう良いところに気がついたね。
そう、ネット情報を鵜呑みにするなということは、突き詰めていくと、ネット情報を見るのは時間の無駄だということにもなる。これが勉強の進んだ学生で、法的な問題についての知識がかなり豊富になり、正確なところは知らない問題でもなんとなく当たりはつけられる程度に判断力が備わってくれば、ネット情報の真偽もいちいち文献調査をしなくてもある程度は可能となるので、そうなればネット情報で効率的に調べ物ができるのである。
というわけで、「急げば回れ」とか、「学問に王道なし」とか、平凡な真実にたどり着いたというのが今日のお話。
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