知財の重要判決も未公開のまま埋もれてしまう現状 by #谷川和幸 ・関西学院大学法学部准教授
谷川先生は、司法行政文書の開示制度を用いて、最高裁に地裁・高裁の知的財産権関係民事事件のすべての裁判所名、事件番号および終局日がわかる文書の開示を求め、首尾よくリストを入手された。
そして公開されている裁判例との比較において、公開事件数や率を算出された。さらに未公開事件を記録閲覧によって重要と思われるものを調査紹介されている。
全くすごい労作である。
その結果、令和3年までの5年間で、知財高裁では97.7%の公開率を誇るが、大阪高裁では59.3%の公開率にとどまり、東京地裁本庁では87.1%、大阪地裁本庁では77.3%、そしてその他の地裁に至っては4.1%しか公開されていないのである。
まあ、その他の地裁で知的財産権関係事件が係属することは、管轄規定のために少ないのであり、実数としても5年間で6件というレアな存在ではあるが、それでも146件中6件しか公開されていないという現実ではある。
さらに谷川先生は、令和元年に関して全件調査を実施され、先例的価値を有するかもしれない判決がどれくらい埋もれているかを、特に公開率が低い東京大阪以外の地裁の令和元年判決27件を調査された。個々の研究結果について興味がある方は、ぜひ、原文を当たられたい。
| 固定リンク
「法情報学」カテゴリの記事
- 民事判決情報データベース化検討会報告書が公表された(2024.08.09)
- 知財の重要判決も未公開のまま埋もれてしまう現状 by #谷川和幸 ・関西学院大学法学部准教授(2023.01.21)
- Wikipediaの記事を裁判に証拠として提出することの効果(2023.01.08)
- #訴訟記録 から紛争の相手方の住所を知り、殺害に及んだとされる事例(2023.01.06)
- 民訴IT化法による改正の施行日が複雑な件〜今年の2月20日から3月1日までと3月1日以降未定の期間の法律の見方(2023.01.05)
コメント