jugement:アマゾンに出品されたバッテリーによる火災の責任をアマゾンが負わないとされた事例
東京地裁は、原告の契約責任の追及と不法行為責任の追及とのいずれも否定したが、その理由は大要以下のようなものであった。
まず、アマゾンがサイト上の取引で利益を得ていることから「取引から生ずる危険も負担すべきであり、消費者が安心、安全に取引できるシステムを構築する信義則上の義務を負うとした上、当該義務の中には出店・出品審査義務が含まれる」との主張について、「義務の具体的内容が必ずしも明らかではなく、被告がそのような審査を可能な限り講ずることが望ましいという指摘を超えるものとは認め難い」とし、オーキーとの和解も成立していることを挙げて、原告主張の義務の存在またはその義務違反を否定する。
次に「被告が負うべき消費者が安心、安全に取引できるシステムを構築する義務の具体的内容として、保険・補償制度構築義務」があるとの原告の主張に対しても、その内容は不明であり、やはりオーキーとは和解していると指摘して、否定している。
不法行為責任について、まず特商法の表示義務をアマゾンが出品者に対して履行させる義務があるとの主張に対しては、電話番号も連絡用フォームもあり、特にフォームを通じた連絡により最終的に和解が成立していることから、オーキーの対応の遅れがあってもその責任をアマゾンに負わせることは出来ないとした。
それから商法14条または会社法9条の名板貸責任についても、「原告が、本件売買契約の時点で、本件バッテリーの販売者を被告と誤認していたことを認めるに足りる証拠がない」として退けている。
原告は、消費者委員会の「オンラインプラットフォームにおける取引の在り方に関する専門調査会」報告書を手がかりして、デジタルプラットフォーム事業者であるアマゾンの責任を論証しようとしたところであるが、残念ながら裁判所の容れるところとはならなかった。
この問題は最近プラットフォームという言葉とともに新たに出できたように認識されているかもしれないが、電子商取引のはじめからある電子モールの責任という論点で、しかもその法理論はインターネット以前のデパートなどがテナントの取引相手に対する責任を負うかどうかという論点に直結している。
要するに、オウムだかインコだかの病気の事件を想起せざるを得ない論点なのである。
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