« Book:六法推理 | トップページ | jugement:アマゾンに出品されたバッテリーによる火災の責任をアマゾンが負わないとされた事例 »

2022/06/01

arret:精神病院が拉致監禁に加担しているとの報道を見てしたツイートが名誉毀損とされた事例

東京地判令和3年10月21日<https://www.bengo4.com/c_23/n_13728/>

東京高判令和4年5月31日<https://www.bengo4.com/c_23/n_14548/>

 

精神科医で筑波大教授の斎藤環さんによるツイッターの一連の投稿が名誉毀損にあたるとして、東京都内の精神科病院が、斎藤さんに300万円の損害賠償などを求めていた裁判で、東京地裁は10月29日、斎藤さんに20万円の支払いを命じる判決を下した。

原告の精神科病院をめぐっては、ひきこもり状態にある人から「強制入院させられた」との訴えがあり、斎藤さんは同病院を批判するツイートを投稿していた。

この一審判決に対して双方が控訴して出された控訴審判決は、

「ケツモチ」が含まれる投稿(2020年6月15日の2つの投稿)については、〈病院が拉致監禁行為に協力していることにより暴力団やヤクザと同程度に悪性が強い組織であることをいうものであって、犯罪行為に加担する組織であることを表現を変えて述べている〉と判断した。

また、その他の投稿(2019年11月〜同12月の5つの投稿)についても一体として判断し、〈刑事告訴されたことそのものではなく、告訴事実である拉致監禁行為に協力したことを断定的に述べたもの〉としている。

かくして、1審の20万円の賠償命令を100万円に増額した。

 

Temis2_20200930111701 ツイッターで、報道された内容を元に、なんてひどい奴だ的な反応をツイートすることは非常によくあるわけだが、元の報道機関は取材に基づいて真実でないとしても真実と信じるに付き相当な理由があったとして免責される場合に、その真実相当性をツイートした人は援用することが出来ず、自らよく調べないと、名誉毀損は名誉毀損になるというわけである。

そんなバカなと思うが、しかし理屈としてはそうならざるを得ない。らーめん花月店事件の最高裁決定で、ネット上の言論だからといってちゃんと調べないで書いていいわけがないとされてしまったので、タブロイドの抗弁ならぬネット言論の抗弁は成り立たないのである。

こうなると利用者としては、萎縮して滅多なことは書き込めなくなるか、あるいは匿名の影に隠れて好き放題書くか、いずれかということになる。

そして匿名の影は、発信者情報開示によりこじ開けられてしまうのだが、それは技術的にも法的にも実践的にもかなりハードルが高い。そうすると、他人を傷つける情報発信でも、その被害の程度とか悪性の程度とかの理由以外の理由で、責任追及されるかどうかが決まることになるので、これは甚だ不当なことだと思う。

その上、今月最高裁が断を下しそうではあるが、ツイッタみたいな単なるコンテンツプロバイダが情報基盤で公益的な存在だから削除義務は一切負わないみたいなことを言い放っているので、ますます被害者は立つ瀬がない事になっている。

最初にボタンを掛け違えているのではないかと言う感じがするのだが。

|

« Book:六法推理 | トップページ | jugement:アマゾンに出品されたバッテリーによる火災の責任をアマゾンが負わないとされた事例 »

パソコン・インターネット」カテゴリの記事

裁判例」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« Book:六法推理 | トップページ | jugement:アマゾンに出品されたバッテリーによる火災の責任をアマゾンが負わないとされた事例 »