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2022/03/26

AV出演契約の拘束力は性的自己決定権放棄の限度で強制不能

18歳、19歳のAV出演契約取消権が、成年年齢引き下げに伴って失われてしまうことが問題視されている。

 

しかし、この議論にいまいち乗り気になれないのは、20歳以上でも同じだと思うからで、もし特別法などで例外的に取消権を認めてしまったら反対解釈の根拠になってしまわないかとも心配する。

その他、高校生の問題に惹きつけた報道が目立ってしまったり、親の同意を得た出演には問題がないのかという事になったり、成年年齢の引き下げに伴ってクローズアップすることによる歪が出てくる。

性行為を目的とする契約は公序良俗に反する面があるので、意に反する性行為の強制につながる一切の法的拘束力や違約罰的な法的効果は生じないものと解すべきで、それは年齢性別には関係なく妥当するというのが私見。
自然債務とツイートしていた弁護士さんがいたけど、同旨かな。

 

このように解釈すると、AV出演契約を結ぶ製作者側は不確実性を強いられるわけだが、それは別にAVプロダクションに限られない。

例えばオーロラを撮影する企画とかと同じに考えれば、リスクヘッジには保険でもかけておけということになる。人の性的な振舞い(公開も含めて)を対象とする企画なんて、その人の自由意思に最後まで依存する、自然相手の企画といってよいのだ。

なお、法的強制力がないと解しても、なお被害事例はなくならないだろうことも忘れてはならない。
経済的に追い込まれてとか、社会的圧力でやむを得ずとか、端的に無知につけ込んだり暴力的な振る舞いで畏怖させたりして強要する事例はなくならないだろうが、そういうのは刑事制裁で抑止する対象だ。

前渡金で縛るということも、これは見方を変えれば人身売買なのであり、前渡金を返さない限り出演を拒めないと脅すのは、前渡金で縛って置屋で売春婦に仕立て上げるのと法的には同等である。

 

以上のような話の前提には、当然ながら、売春契約は公序良俗に反し無効であるという価値判断を前提にしているし、似たような問題は臓器売買とか、代理母契約とか、そういうものとの類比も頭にある。

また、AV人権倫理機構のこれまでの活動、特にホットライン開設とか女優に対する説明の機会の保障とか、過去の作品の販売等停止申請手続とその状況とか、きめ細かな活動を積み重ねていることは十分尊重に値すると考えていることを付記しておく。

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