Book:判例による離婚原因の実務
これまた、出版元のLABO渡邊さんからご恵贈いただきました。ありがとうございます。
裁判例において離婚原因があるとかないとかどのように認められているのかということは、裁判所の結婚観の現れといってもよい。
本書は、離婚裁判例1081件の分析により、裁判所の結婚観を浮き彫りにしているとともに、有責配偶者からの離婚請求の検討や協議離婚の問題点の指摘など、離婚にまつわるその他の重要論点についても論じている。
さらに、離婚原因として不貞ばかりが取り上げられているというわけではなく、悪意の遺棄や回復不能の精神病、そして婚姻を継続し難い重大な事由についてもきちんと取り上げられている。
ちなみに、協議離婚でいうと、日本は極端なまでに簡単過ぎる離婚手続法を持っているため、一刻も早く別れたいというニーズは満たすものの、カップルのうち強者が好き勝手できてしまうという問題点がある。その点で、本書にも書かれているように、現在の民法制定時にGHQは裁判所の関与を必要とするよう求めていたし、最近裁判所が関与しない離婚方式を認めたフランスでも、そのためには両当事者に弁護士がついて、子の利益や財産分与についての完全な取り決めが要求され、公証人も関与し、もし未成年子が裁判官に意見を聞いてほしいと思ったら、裁判所に行かないとならないという制度になっていて、弱い立場の配偶者が一人で追い出されたり、養育費が必要なのに合意されないため貧困の母子家庭・父子家庭が生まれたりということはないようになっている。
そうした事も踏まえて、本書を読むと非常に興味深い。
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