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2022/02/28

Book:冤罪法廷

今年読んだ25冊目・26冊目は、ジョン・グリシャムの『冤罪法廷 上

 

ジョン・グリシャムはエンタメ系のリーガル・サスペンスから社会派法廷小説に軸足を移したと思うが、この作品はまさしく真骨頂といえる。 

Liser1_20210407112001 アメリカの冤罪被害者を救出する弁護士グループというか団体「ガーディアン・ミニストリーズ」に所属する弁護士ポストが主人公であり、原題もThe Guardiansという。

現実のアメリカ司法は、イノセント・プロジェクトのニュースなどを見ていると、再審無罪を勝ち取る人がたくさんいて、死後再審も行われているというイメージであるが、彼我を問わず確定判決にチャレンジする再審は困難に満ちた、成功確率の乏しい作業であり、その困難に敢えて立ち向かう姿が淡々と描かれている。

作者のあとがきによれば、アメリカで63人もの冤罪被害者を救出した団体「センチュリオン・ミニストリーズ」がモデルだそうで、ストーリーもジョー・ブライアンという現実の冤罪被害者の話に基づいている。ただし、あとがきでは、ジョー・ブライアンは79歳で健康状態が悪化しつつあるなか、7度目の仮釈放却下という憂き目を見ている。

なお、物語にはフランキーという、先にガーディアン・ミニストリーズが冤罪を晴らして自由の身にしてあげたサバイバーが、ボランティア・サポーターとして重要な役割を果たしている。

日本でも、鴨志田弁護士を始めとして、冤罪被害者の救出に尽力している多くの弁護士がおり、DNA鑑定の過信とか、あるいは捜査当局の証拠捏造とか、再審法廷などで明るみに出る事件が跡を絶たないが、他方でこの前に紹介した『執行』の題材となった飯塚事件のように、同種鑑定に基づいた足利事件が冤罪だったということが判明した時点ですでに死刑が執行されていて、死後再審の開始に至っていないという事件もある。アメリカは陪審裁判で、それが冤罪の一因となっていそうなところがあるが、日本の裁判員裁判は、その事実認定能力において大丈夫か、など、色々と考えさせられる作品である。

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