Book:大学生活と法学
この本のコンセプトは、基礎的・抽象的な説明から具体的な問題に進むというオーソドックスなやり方をとらず、大学生が日常的に接するであろう様々な出来事(トラブルとかいうレベルではない)を点景として提示し、そこから法的な視点での問題の取り上げを解説で指南していき、最後は読書案内的な参考文献提示で締めているというものだ。
従来も大学生に(なるべく)身近な設例から抽象的な法原理の説明にいざなうスタイルはごく普通にあったが、この本はそのような「設例」、いわば講壇設例とよばれるものではなく、もっと今どきの若者がちょっとだるそうに話している感じの日常を題材にしているところだ。
それに引き続く解説の部分は、正直いって難しすぎるのではと思うものとか、「この点」の好きな弁護士さんらしい文章とかが目につくのではあるが、全体としては平易かつ興味深く読めるものが多い。
最後には憲刑民の各分野の基礎的な説明もあり、またコラム的に勉強の仕方の説明もあり、至れり尽くせりだ。
個人的にも、おそらく情報法への関心の高い方々が著者になっているのだろうなと思われる偏りが見受けられるところが良い。
もちろん、かなり無理矢理感があるシーンが出てくることもあるし、デジタル遺品とかは身近に感じられるかもしれないが内容的には最初から最後まで結構高度な話だし、弁護士の真実義務と依頼者の利益との板挟みなど普通は出てこない話も出てくるのだが、それらは著者のみなさんが大学生に伝えたいという意欲の表れということなのだろう。で、実際そういう問題に食いつきの良い大学生は結構いるものでもある。
全部で22のアクトと、ちょっと中途半端な数だが、一年生向けのゼミテキストにしたら面白いだろうなと思う。いや、2年生でもいいかな。
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