Book:北条義時
今年読んだ6冊目は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」関連商品であるところの北条義時 鎌倉殿を補佐した二代目執権 (中公新書)
あとがきによれば、まさに大河ドラマが扱うからということで立てられた企画らしく、流石に専門家は筆が早いと感心する。
義時の物語というよりは、義時が活動した時代の鎌倉幕府や御家人たちの動きを追った物語というべき内容だが、ともかく無知な私が驚くのは、征夷大将軍=鎌倉殿というわけではないということだ。
頼朝が征夷大将軍の位を受けたのは「いい国作ろう鎌倉幕府」の1192年だが、奥州平泉藤原氏滅亡の1190年から権大納言として武家の棟梁に認められていた。征夷大将軍と名乗っていたのも四年ほどで、以後頼朝死去1199年までの間は前右大将と称していたとのことである。
次の頼家も1199年に頼朝の後継者として認められたが、征夷大将軍になったのは1202年、出家して辞任したのが1203年、殺されたのは1204年。
その次の三代将軍実朝は、跡を継いだ1203年から征夷大将軍の宣下を受け、公暁に殺されるまで将軍で有り続けたが、将軍位に付けたのは後鳥羽上皇が主導したのだそうで、その実朝の暗殺後は後鳥羽上皇が義時を追討しようとして逆にやられてしまう(承久の乱)。
ということで、少なくとも頼朝からの三代の源氏の中で将軍として棟梁になったのは実朝だけだったと言ってもよい。
それに、この本の書き方によるとも言えようが、ともかく承久の乱までの鎌倉幕府は内紛に次ぐ内紛で、御家人が互いにつぶしあい、北条氏とて政子と義時泰時が安泰でも他の身内はやられたりしていて、鎌倉殿の13人と呼ばれる側近たちのうち、失脚や謀反により潰されなかったのは北条義時、三善康信、大江広元くらいであろうか、安達家では盛長が生涯を全うしている。北条時政すら、失脚しているのだ。
こんなことは、大学共通テストには出ないのだろうな。いや、出るかな?
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コメント
> こんなことは、大学共通テストには出ないのだろうな。いや、出るかな?
共通テストには出ない気がしますが、普通に大学受験で勉強する範囲だと思います。
ただ、義時や北条氏がどういうモチベーションで他氏を排斥していったのか、価値観的なものがよくわからないんですよね。結果だけ見ると「北条氏の言うことは絶対!」な王様ゲーム的なノリになっているんですけど、義時や泰時は必ずしもそうではないモチベーションでやっていたのですが、結局、どこかで間違えて時頼のとき他氏排斥が完成したと同時に得宗が徐々に形骸化して、今度は御内人の間での争いになっていって実質何も変わっていないのか。。。
こういったあたりを(すべてが史実ではないんでしょうけど)鎌倉殿の13人を楽しみにしてます。
投稿: 元助手A.T. | 2022/02/04 14:41