jugement:臓器移植の取材と番組放映は提供者遺族への不法行為となるか
岡山大学で行われた6歳未満の男の子(ドナー)の肺の1歳の女の子(レシピエント)への移植手術を、TBSから請け負った制作会社が5ヶ月にわたって密着取材し、番組中でドナー遺族に宛てた感謝状の内容が映されたり、移植される肺がモザイク無しで映されたり、執刀医が肺について「小さいな」「目論見どおり」「軽くていい肺」などと発言したのが放映されたことについて、ドナー遺族の精神的苦痛を生じさせた不法行為に当たるとして、移植コーディネータの法人、制作会社、テレビ局、執刀医とその使用者たる岡山大学に対して損害賠償を求めた事例。移植コーディネータ法人についてはドナー遺族との間の準委任契約不履行と構成されている。
結論は、請求棄却であり、その理由は番組の目的や内容に照らして原告らの権利侵害になるほどの違法性が認められないこと、要するに受忍限度を超えるものではないということである。
親御さんの悲しみと苦しみは察して余りあるものだが、基本的にそれはお子さんを亡くした悲しみと理解するものだ。
そしてその悲しみを乗り越えて臓器移植に同意された心情が、テレビ番組でひどくかき乱されてしまったというところなのだろうが、不幸な事故だったということで、なんともやりきれないが、判決はやむを得ないところだろうと思う。
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