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2021/12/16

民訴教材:妹名義の貸金返還請求権について妹名義で訴え提起した事例

弁護士、無断で訴訟か 裁判所が「不適法」認定(産経新聞)

Temis2_20200107190101 なかなか興味深い事例だが、実際に訴え提起してしまったのは弁護士の問題か、それとも当事者の問題か微妙だ。

記事によると、兄が妹の名で貸し付けて、その取立ての訴訟を弁護士に依頼したら、その弁護士代理人が妹を原告として訴え提起したらしい。

兄から訴訟委任を受けて妹に意思確認せず妹名義の訴状を起案提出したんだから、そこに懲戒ものの手抜かりがあったのだろう。
また債務者側でも、妹名義にかかわらず兄から借りた認識のようで、「債務者とされた被告側の男女2人も「女性から現金を借りた覚えはない」と主張」しているという。

そうだとすると、債権者は「妹こと兄」で債務者との間に貸金返還請求権の実体関係が成立しているのであるから、そのことを把握しているのであれば、代理人としては兄を原告とする訴えの提起をするだろう。

ところが妹名義の訴え提起をし、妹名義の訴状のみならず委任状も提出され、さらには「女性の署名と押印が入った陳述書も証拠提出され、「(貸金が)私自身の現金で間違いない」と記されていた。」という。この陳述書は誰が作ったのか、問題となる。

 

その点は、刑事事件なり弁護士会懲戒なりで究明すればよいが、当該訴訟については、本来なら訴状訂正で処理できそうである。ただし、理屈にこだわれば任意的当事者変更か。

 

そして、この訴訟では「「訴えは原告の意思に基づかないものとして、不適法といわざるを得ない」と判断。貸金返還の当否には踏み込まずに訴えを却下し、判決はすでに確定した。」というのであるから、本来原告となるべきだった兄が別訴を提起すれば良いことになる。

この解決は、結局、任意的当事者変更を認めたのと大きく違うものではないわけだ。まあ、訴状訂正を認めた方が訴訟経済には適うのだが。

 

なお、報道だけから理解しての話なので、実際に兄が債権を有しているのかどうか、また弁護士が杜撰だったのかみんなで弁護士をはめたのか、そのあたりはわからないところではある。

 

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