Courts:林道晴裁判長の第三小法廷を傍聴
最高裁の弁論を傍聴するのは、まだ二度目なのだが、それでも林道晴裁判長の審理の進め方はびっくりした。
まずもって、傍聴人が法廷に入る時点で、既に当事者(といっても被上告人は欠席で上告代理人のみ)と裁判官四人、書記官は着席していた。
以前は傍聴人入廷後、10分近く待たされた後に廷吏が劇場よろしく「まもなく裁判官が入廷します」と告げて、起立して裁判官をお迎えしたのだが。先に入っていて上告代理人となにかしていたのであろうか。
その後、林裁判長は、自ら開廷を宣言し、被上告人欠席であること、上告代理人が上告理由書を陳述するかと確かめ、被上告人側は提出してある答弁書を擬制陳述の扱いにすると説明し、それから傍聴人と上告代理人に既に配っている説明書の事案の説明を行い、これについて補足することがあれば述べてくださいと上告代理人に促す。傍聴人に対して事案の説明をする裁判官は初めて見た。
その後、林裁判長は、今の陳述にもあった最高裁の判例違反について、なにか反論はあるかと被上告人側に期日外で釈明をしたところ、特に反論はないということだったと釈明結果を弁論に上程し、その上で判決言渡期日をもう12月21日に指定して閉廷した。
結論はもちろん出ているわけだが、迅速な運用だ。
事件の内容は、政務調査費の違法な使用により不当に利得した分を返還するよう、市民団体が求めたというものだが、原審は、支給された政務調査費よりも政治活動費全体が多額の場合でも、違法な使用分をすべて返還するよう命じた。しかし判例によれば、政治活動費として支出した額が全部で1000万円、そのうち400万円が政務調査費の支給を受け、残る600万円は自己負担していたという場合に、仮に200万円分の政務調査費としては違法な支出があったとしても、それは自己負担の部分から支出したものと考えて政務調査費の不当利得返還義務は生じないとした。
今回の事案も、2つあって、そのうち1つは返納した部分があったりしてやや複雑だが、単純化して言えば、同じことになり、返還すべき不当利得はないはずというのが上告理由の主張であった。
民訴の一部請求と相殺の抗弁に関する外側説を思い浮かべると、よく理解できる。
なお、傍聴席は一般向けに40席位あるのに、コロナ対策で半分しか座らせず、遅れてきた私のゼミ生が二人、入れないという自体が出来した。コロナ対策は大事なことだが、傍聴の機会を保障することも重要だ。
最高裁の弁論および判決は、ぜひとも、ネットで中継してほしい。
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