刑事確定記録の記事利用例
東京新聞「【独自】「軽い気持ちで賭けマージャン続けた」…黒川元東京高検検事長が後悔の供述 刑事裁判記録が本紙請求で開示」
11月11日付けの記事には、以下のように書かれている。
本紙は今年4月、黒川氏に関する刑事裁判記録の閲覧を東京地検に請求。昨年6~7月と検察審査会の「起訴相当」議決後の2~3月の取り調べに基づく黒川氏の供述調書7点のほか、記者らの供述調書、現場写真など約200枚分の記録が今月初めに開示された。
刑事確定訴訟記録法は、刑事訴訟法53条が誰にでも閲覧させる旨の規定をおいているのを受けて、具体的手続を定めるものであるが、法律上数多くの例外規定がある。
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一 保管記録が弁論の公開を禁止した事件のものであるとき。
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二 保管記録に係る被告事件が終結した後三年を経過したとき。
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三 保管記録を閲覧させることが公の秩序又は善良の風俗を害することとなるおそれがあると認められるとき。
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四 保管記録を閲覧させることが犯人の改善及び更生を著しく妨げることとなるおそれがあると認められるとき。
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五 保管記録を閲覧させることが関係人の名誉又は生活の平穏を著しく害することとなるおそれがあると認められるとき。
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六 保管記録を閲覧させることが裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員又は裁判員候補者の個人を特定させることとなるおそれがあると認められるとき。
このうち4号と5号は、広く解釈すればいくらでも広く、事実上すべての記録を閲覧禁止とすることもできてしまうので、きちんとした解釈が必要な部分である。
ちなみに、保管検察官の独断で非公開とされても、不服申立ての余地はある。
第八条 第三条第二項の規定により保存の請求をした者(同条第四項において準用する同条第二項の規定により保存期間の延長の請求をした者を含む。)又は第四条第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)若しくは第五条第一項の規定により閲覧の請求をした者であつて、当該請求に基づく保管検察官の保存又は閲覧に関する処分に不服があるものは、その保管検察官が所属する検察庁の対応する裁判所にその処分の取消し又は変更を請求することができる。
そもそも閲覧請求する部外者が少ない、というかほとんどいない上、不服申立てする人ももっと少ないので、こうした正式の手続に乗らずに窓口の検察事務官が門前払いの窓口指導をすることも多く、「関係のない人は閲覧できませんよ」などとデタラメを言うこともあるので、要注意である。
参考文献は記者のための裁判記録閲覧ハンドブック
法制度の解説から実体験まで、非常に参考になるので、記者の皆さんは是非活用して、面白い記事をどんどん書いてもらいたい。
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