Book:女たちのポリティクス(読後感)
今年読んだ41冊目は、ブレイディみかこさんの女たちのポリティクス 台頭する世界の女性政治家たち (幻冬舎新書)
期待通り、とても面白かった。
女性政治家たちの中でも、メイ首相のような徹底的にこき下ろされてしまう人もいれば、スタージョンとかAOC(アレクサンドリア・オカシオ=コルテス)とかアーダーン首相、サンナ・マリン首相などのようにプログレッシブと評されるダイナミズムの持ち主と、フェモナショナリズムを体現してしまうマリーヌ・ル・ペンやアリス・ワイデル、ジョルジャ・メローニ、シーブ・イェンセンといった右翼女性リーダーたち、それに独特の漬物石として評価に困っている風のメルケルと、ブレイディみかこさんの目から見ても実に多様な女性政治家たちが活躍している。
一方で、日本に目を転じると、小池百合子に稲田朋美といった女性政治家が取り上げられる。
日本にも、他に色々といらっしゃるとは思うし、稲田朋美が出でくるならもう少し悪質なレベルの右翼女性政治家が列をなしている感じがあるが、いずれにしてもプログレッシブな、世の中を変えてくれるかもしれないという期待を抱かせるような、そんな女性政治家が日本にはどうも見当たらない感じがする。
その中で、稲田朋美に関しては、欧州の右翼女性リーダーが台頭する理由、すなわちイスラムフォビアがフェミニズムと結びついてフェモナショナリズムになっている状況を引き合いに出して、そうした波が日本に及ぶとすれば最もそれに乗りやすいのが稲田朋美だという指摘とか、小池百合子がリベラルっぽい女性たちにも人気を博するのは個人の努力で突破するフェミニズムと新自由主義とが親和性を持つからだとか、非常に参考になる指摘が含まれている。
それともう一つ、「「サイバー暴行」と女性政治家たち」の節とか、「英総選挙を女性問題の視点から見る」の節で描かれていることは、ネット、特にSNSで展開される女性リーダー叩きの酷さで、そうした女性叩きの背景に性的な快感が潜んでいるから一層気持ち悪いとし、さらには労働党に代表される左翼ないしオールドリベラルが女性政治家に冷たいという現実とかが描かれている。
日本の政治を考える上でもとても参考になる一冊なのだが、今日投票日の横浜市長選挙を思い起こすと、女性候補は林文子現市長ただ一人だし、彼女はカジノ推進でアウトオブクエスチョンだし、世界の女性リーダーのあり方やそれと社会との付き合い方を学んでも、全く役に立たないというのが残念な現実であった。
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