Book:ネット企業はなぜ免責されるのか
今年読んだ31冊目は、長島光一先生の監修にかかるジェフ・コセフ氏のネット企業はなぜ免責されるのか――言論の自由と通信品位法230条
一斉を風靡した通信品位法、連邦最高裁が一部違憲判決を出したことで知られるが、その230条による「善きサマリア人の法」は、それ以前のネット無法地帯という汚名に裏付けを与えてしまった感がある。
日本のいわゆるプロバイダ責任制限法によるプロバイダ免責規定と同様の問題があり、この規定によりいかに被害者が見捨てられてしまったか、ネットの暴力が被害者を踏みつけてきたか、如実に明らかにし、揺り戻しが始まっているところが描き出されている。
日本の問題状況は、プロバイダ責任よりも発信者情報開示が中心となっていて、開示がスムーズに行くのであれば本来の姿と言ってもよいが、問題は開示が不十分なままとなっているところだ。これが今年の改正でどうなるかはまだわからないが、早くも悲観的な観測が出ている。
対してアメリカでは、匿名の加害者を被告とする訴えを提起して、プロバイダにサピーナを出して顕名にするというやり方が行われているので、日本よりは匿名の壁は高くないのかもしれない。
ただ、発信者の責任を追及することができても、なお、流通してしまった権利侵害情報をどうにかしないと、被害は無くならない。そしてそれができるしすべきなのはプロバイダだという点が、プロバイダ責任を追及する必要を基礎づけている。
日本は発信者情報開示の可能性でもプロバイダ責任の可能性でも、被害者には酷な状況ということができそうに思う。
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