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2021/04/30

arret:複数の訴えの利益共通と訴え提起の手数料還付請求

最決令和3年4月27日PDF決定全文

新宿区議会議員選挙で当選したXが、居住実績がないことを理由に当選取消決定を受け、裁決でも棄却されたので、そのそれぞれの取消しの訴えと、Xの当選取消しにより代わって当選となったAの当選無効の訴えとを提起した。

Xは、取消しの訴えと当選無効の訴えのそれぞれの訴額合計320万円に応じた手数料21000円を納付したが、Xの当選取消決定の取消しとAの当選無効とは利益が共通するからと、訴額は両者合わせても160万円であり、13000円を超える8000円が払い過ぎだとして還付を求めた。

 

 

最高裁は、以下のように述べて、申立てを却下した原決定を支持、許可抗告を棄却した。

訴え提起の手数料の額の算出の基礎となる訴訟の目的の価額は,訴えで主張する利益によって算定し,財産権上の請求でない請求に係る訴えについては,160万円とみなすとされている(費用法4条1項,2項,民訴法8条1項)。そして,一の訴えで数個の請求をする場合には,その価額を合算したものを訴訟の目的 の価額とするのが原則であるが,その訴えで主張する利益が各請求について共通である場合については,上記の合算をしないものとされている(費用法4条1項,民訴法9条1項)。
 そうすると,訴訟の目的の価額を算定するに当たっては,まず請求ごとにその価額を算定することとなるところ,本案訴訟は,本件裁決の取消し,本件決定の取消し及びAの当選無効を求めるものであり(請求1~3),これらは,財産権上の請求でない別個の請求として,それぞれその価額が160万円となる。
 そして,請求1及び2は,いずれも,認容されることにより,結局のところ抗告人の当選を無効とする本件決定の効力を失わせることを目的とするものであるが, 請求3は,認容されることにより,抗告人とは別の当選人であるAの当選が無効とされるのであって,請求1及び2と請求3とでは,それぞれ認容されることによって実現される状態が異なるものといわざるを得ない。そうすると,請求1及び2と請求3とでは,訴えで主張する利益が共通であるということはできない。

当然すぎて、抗告がなぜ許可されたのが不明だが、この選挙関係の裁決取消しと当選無効というケースでの手数料問題が新しい判断ということであろうか。

一応コンメンタールで民訴9条を見ても、ぴったり来る例はなかった。

 

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