Book:アメリカ人が驚く日本法
この本は、アメリカの日本法ケースブックや日本法研究者の論文を取り上げて、つぎの決め台詞を挟んで解説を加えるというスタイルでほぼ一貫している。
一体、この事件のどういうところがアメリカ人には面白いのでしょうか。「えーっ」という驚きの部分はどこにあるのでしょうか。
取り上げられている事件には、永代供養契約とか、レコード会社の準専属契約とか、愛人への贈与とか、人間国宝のフグ毒死事件とか、いかにも日本的と思われるものもあるが、PLとかエホバ輸血拒否事件とか医療過誤とか、アメリカでこそ大々的な展開を見せている類型が日本ではどう扱われているかを取り上げるものもある。
その中で、契約と不法行為の守備範囲が違うことや、約因理論、違約金条項、損害論、裁判官の裁量の広さなど、英米法との比較においておなじみの論点がこれでもかと出てくる。
個人的には、愛人への贈与契約のところでかなりのスペースを割いて怒りを表明されている判決文の匿名化の弊害に、最も共感を覚える。樋口先生が取り上げていない部分、すなわち判決文の公刊割合がごくごく僅かにとどまっていることや、訴訟記録の閲覧謄写の便宜・可否に極めて大きな格差があることなど、まさしく裁判は公的なものというアメリカの見方に対して裁判はプライバシーと言わんばかりの日本の考え方の独自性が現れている。
しかし、ヨーロッパも視野にいれると、特殊なのはむしろアメリカかも、ということにはなるのだが、それにして大した考慮も根拠もなしになんとなく圧力に負けて匿名化と非公刊で事なかれ主義的な姿勢を貫いているのは、批判されるべきだ。
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