Book:子どもは善悪をどのように理解するのか?
しかしながら、著者は発達心理学の専門家であろうが、法学的な前提知識、たとえば刑法上も道徳的な悪性を要素とするものとそうでない形式犯的なものとの基本的な区別があり、それによって行為規範の実効性を確保する方法が異なるとか、そういった議論とかぶるところがたくさんある。
後半に出てくる文化特有の道徳性という話も、おそらく法の継受により西洋発祥の法が例えばイスラム教信者が大部分を占める国とか、中国思想に大きく影響を受けた後に鎖国して260年も独自文化を育んだ東洋の国とかにどのように受容され、あるいは受容されないかという話とかぶる。
また、子どもの善悪観念の発達経過についても、流動性知能と結晶性知能とがあるという部分は、先日ツイッターである弁護士さんとしたやり取りで、若い頃の瞬発的学習能力が失われつつある今、蓄積された能力をやりくりしてなんとかカバーしているという話と共通するものであろう。とても深くうなずく話だ。
一つ文句を言うなら、各章の最後にあるまとめが、それぞれの章で説明していたこととかなりレベルが違うのではないかという感じがする点である。発展学習のヒントとかいう感じになっているので、そのまとめだけ読んでも話は全く見えないのだ。
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