Booklet:イマドキの裁判
今年読んだ12冊目は、以前に頂いたときに紹介した日本裁判官ネットワークの裁判官だから書ける イマドキの裁判 (岩波ブックレット)
最近の裁判周りの話題について、淡々と裁判を担当する側の思いや考え方が解説されている。
Q&A方式で、テーマ的には攻めた感じのものが多いが、それに対する回答は、極めて常識的というか、良い意味でも悪い意味でも裁判官らしいものとなっている。
ただ、裁判官の立場からは、例えば傍聴とか裁判の公開原則の意義ということについては、論じるのも限界があるのだなぁと思わされる。
傍聴人は蚊帳の外かというQ28だが、最高裁判決の立場を前提に解説するにとどまっており、傍聴人の存在や裁判の公開を憲法が定めている趣旨を制度的保障にすぎないとしてしまうから、裁判の公開の意義が主権者による裁判の監視にあるという見方が出てこない。
監視される側が、監視方法を裁量によって左右できてしまう仕組みになっているところがすでに歪んでいるのだが、そのような歪みがあることを前提に、「裁量」の幅は極めて狭いものという理解を裁判所の側が共有しないと、裁判所に全面的に判断させることは出来ないということになる。つまり、裁判所の独立を守るためにも、裁判所に対する監視を裁判所自身が軽んじることはあってはならない。
そのような見方は、裁判所には無理なのかなと、そんな思いにとらわれる部分であった。
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