謹賀新年2021
2020年は、言うまでもなく、コロナウイルスの感染対策に振り回された年でした。
個人的にも、海外出張が一度もないという数年に一度クラスの年となりましたし、日本私法学会、韓国で予定されていたアンリキャピタン協会のシンポジウム、バルバドスで開催が予定されていた世界家族法会議、日本で予定されていた日仏民法研究会など、様々な研究集会が中止ないし翌年絵の延期の決定を下し、その翌年、すなわち今年の開催も今の状況では決して楽観視できません。
しかし他方で、オンラインツール、とりわけビデオ会議システムの普及という点では画期的な年となり、日本法社会学会を皮切りに、日米法学会、日本民事訴訟法学会、日本消費者法学会、情報ネットワーク法学会、情報法制研究所オンライン情報法セミナー、仲裁ADR法学会、司法アクセス学会などは、Zoom、WebEX、Google Meets、MS Teamsといったビデオ会議システムを駆使した形で行われ、ほぼ成功例ばかりとなりました。
これに対して、ハイフレックス方式で、会場参加もビデオ会議システムによる参加も可能としたのがデジタル・フォレンジック・コミュニティでした。この方式は、本来コロナ禍でなくとも行うことが考えられる方式であり、今後の学会や大規模な研究集会では、このハイフレックス方式の実施が強く望まれるところです。
これらの学会の中心的なメンバーは大学教員が占めているのですが、その大学では4月の授業開始が叶わず、その後も状況は必ずしも好転せず、5月頃からビデオ会議システムもしくはオンデマンド方式による動画・音声配信により授業を実施したところが大半でした。その際に用いられたビデオ会議システムの各種ツールの使用経験が、上記の学会の運営にも参加にも活かされていたことはいうまでもありません。 この間の大学での状況は、多分に個人的体験に根ざしたものではありますが、授業の方法については本ブログの「突然の遠隔授業は、こうやることにした」で明らかにしていますし、ビデオ会議システムを含む大学の状況についてはIDF第625号コラム:「大学の遠隔授業とセキュリティ」で明らかにしたところです。
更に、各種団体の会議やシンポジウム等の開催にも、このビデオ会議システムを利用する動きが拡大しました。いえ、利用を余儀なくされたというべきかもしれませんが。私の関係しているところでも、学内の各種会議のほか、消費者支援ネット北海道の各種の会議はZoomを用いて遠隔実施されています。実はここは以前から、私が札幌から横浜に移動したため、スカイプのテレビ通話の形で会議に参加させていただいたところですが、今回の事態を受けて全員がZoomによるアクセスをすることが可能となり、また時にはハイフレックス方式を利用したりしています。まだまだハイフレックス方式では複数の端末でオーディオに接続しようと試みる人がいて、ハウリング問題が発生してしまいますが、次第に慣れることでしょう。上述のデジタル・フォレンジック研究会の理事会や分科会もビデオ会議システムによる開催です。全国賞生活相談員協会の本部シンポジウムも、会場からオンラインツールを用いて配信されました。私は講演を依頼されましたが、その日はある弁護士会内の会議に出なくてはならない日で、例年でしたらご辞退するところ、ビデオ会議システムを利用するので、事前収録した講演内容を流すのでも問題がないし違和感もないということで、そのような方式で参加することができたのでした。その模様は、全相協サイトで公開されています(全国消費生活相談員協会のシンポジウムで民事裁判IT化とODRを説明)。もう一人の基調講演者である松本恒雄先生は会場から講演をされていましたが、いずれにしても聴衆はネットを通じて見るわけです。ということで、かえって参加可能性が増えたという例でもあります。
参加可能性が増えたといえば、北大の民事法研究会も、WebEXによるオンライン研究会に切り替えてくださり、そのおかげで昨年は参加することが可能となりました。これも、コロナ禍後もハイフレックス方式の継続をお願いしたいところです。
さて、本年は、新型コロナウィルスの感染拡大が日本でもひどいことになるのではないかという短期的な予想と、少なくとも新年度以降はワクチンの普及により状況が好転するのではないか、それでもオリンピック・パラリンピックの実施は世界的な選手選考がそもそも困難で、仮に実施したとしても極めて限定的な、参考記録的な大会とならざるを得ないのではないかという状況です。
大学の授業も、私の勤務校は少なくとも大教室での授業はオンデマンドまたは同時配信のビデオ会議システム利用による遠隔実施で、ゼミだけは対面式ハイフレックス方式という方針です。昨年には闇雲にとにかく実施したオンデマンド授業ですが、このままで良いとは考えておらず、何らかの改善を施したいと考えています。テーマは、学生の参加と主体性の回復です。実はこれは教室で普通に授業をしていたときにも問題となっていたわけですが、オンライン環境ではなおのこと、学生を巻き込む仕掛けがないと、ただ聞いて課題をこなすだけでは苦痛でしかないものとなってしまいそうです。絶妙なトークで学生を引きつける魅力的な先生は何人かいらっしゃるだろうと思うのですが、多数派ではなさそうですし、私も含めてそうした一般的な大学教師のオンライン授業が、学生の学びを引き出すことができる方法を、なおも模索していきたいというのが、とりあえずの年頭の抱負です。
今年こそは、皆様にお会いすることができる環境となることを心から期待して、本年もどうぞよろしくお願いします。
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