Book:お気の毒な弁護士
今年読んだ5冊目は夫婦同姓強制の違憲訴訟で唯一反対意見をだした山浦弁護士のお気の毒な弁護士-最高裁判所でも貫いたマチ弁のスキルとマインド
山浦先生の生い立ちから最高裁判事退官後の弁護士復帰後に至るまでのオーラルヒストリーである。
これまで色々な最高裁判事の自伝(最高裁回想録 --学者判事の七年半など)や少数意見集、エッセイ集、論文集などが出てきたし、オーラル・ヒストリーもいくつか存在する(福田 博 オーラルヒストリー「一票の格差」違憲判断の真意:外交官としての世界観と最高裁判事の10年、一歩前へ出る司法---泉徳治元最高裁判事に聞くなど)が、山浦先生のそれはご本人の肉声が聞こえてくるようなところが随所に見られ、読ませるものだ。
最高裁判事に選任される方法というのは、少なくとも弁護士会からは、派閥→単位弁護士会→日弁連→最高裁→内閣という推薦の連鎖の末ということであり、しかも本人には殆ど途中経過が知らされないまま最後まで行くというところが興味深い。
また、最高裁判事としての判断作用についても、調査官との役割分担、同僚裁判官との役割分担や交流、意見交換など、そして主任裁判官となったときの大変さなど、ビビッドに伝わってきた。
若干の無い物ねだりをするのであれば、山浦先生の強烈な印象を民訴学会に植え付けたリピーター論とか、証拠収集手段の拡充の必要やその活用についてなど、そのあたりのお話ももっと聞いてみたかったし、さらには夫婦別姓についてあえて反対意見を出して損害賠償を認めるべきとされた点についての、他の裁判官との議論があったのか無かったのかなどもお話を伺いたかった。
もし機会があれば、ご本人に聞いてみたいものだが、コロナ禍が続くようなら、一体いつのことになるやらと思う。
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