Book:記者のための裁判記録閲覧ハンドブック
今年読んだ6冊目は、ほんとうの裁判公開プロジェクトという勉強会グループが出した記者のための裁判記録閲覧ハンドブック
皆さんは、刑事裁判にせよ民事裁判にせよ、訴訟記録の閲覧は誰でもできるということをご存知だろうか?
誰でも、いつでもというわけではないが、原則は「何人にも」公開されているのである。
この本は、そんな訴訟記録閲覧を、記者のお仕事のために活用しようという本であり、法律はまさに「何人も」と書いているにも拘らず、陰に陽に利用しにくいようにしている実務をどのように突破するのかという、マニュアル的な要素もある体験記である。
民事訴訟に関しては、民事訴訟法91条が以下のように定めている。
第九十一条 何人も、裁判所書記官に対し、訴訟記録の閲覧を請求することができる。
ただし、91条の2項以下、それから92条において、コピーを取ることの制限や、そもそも非公開にする余地などが定められているが、ここでは原則誰でも事件番号を知っていれば、確定判決を出した裁判所において閲覧ができることが法律である。
また刑事訴訟に関しては、公判に提出される前の訴訟書類は非公開だが、公判に提出され、判決が確定した後の訴訟記録は、刑事訴訟法53条が以下のように定めており、これを受けて具体的な公開手続が刑事確定訴訟記録法に定められている。こちらは検察庁が保管する。
第五十三条 何人も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる。但し、訴訟記録の保存又は裁判所若しくは検察庁の事務に支障のあるときは、この限りでない。
もっとも、民事訴訟の記録よりも相当に厳しい制約が刑事裁判記録の閲覧には定められており、しかもこの本によれば、第三者に対しては閲覧を許していないという嘘を、まず閲覧希望者に受付係がかますというとんでもないことが堂々と行われているようなのだ。
そのような窓口での嘘を突破し、法的な手続に乗るためにはどうしたら良いか、法的な手続に乗ってもその後の苦難に満ちた手続がどんなものか、それを突破して何が得られるか、この本はメディア関係者の、特に新人がみんな読んでおく価値のある本である。
河合夫妻の裁判記録とか、それからやまゆり園事件とか座間市の事件とかの裁判記録も、それから京アニ放火事件の裁判記録も、確定後は閲覧が可能なのだ。取材には不可欠だろう。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- Book:腐敗する「法の番人」(2024.06.30)
- comic:ヒストリエ12(2024.06.29)
- Comic:まんが アフリカ少年が日本で育った結果 ファミリー編(2024.06.28)
- Book:フランス人ママ記者、東京で子育てする(2024.06.27)
- Book:赤と青のガウン オックスフォード留学記(2024.06.23)
コメント