弘前裁判員裁判シンポ via Zoom
裁判員制度でオンラインシンポジウム/弘前
弘前大学人文社会科学部が主催し、同学部地域未来創生センターが共催。弘大を中心に全国をオンラインでつないで開催した。
1部では同学部の平野潔教授ら3人の学識者が裁判員制度の課題を報告。平野教授は裁判員の経験が社会に共有されていない現状を指摘し、経験者の声を拾う弘大での取り組みを紹介して「ただ共有するのではなく、制度の中に取り込む必要がある。参加者の意見を踏まえた制度設計を考えなければ」と訴えた。
このほか、昨年10周年を迎えた裁判員制度の展開や、新型コロナウイルス感染拡大に伴うドイツの公判での対応などが紹介された。
2部では幅広い年代や職業の裁判員経験者6人がパネリストとして登壇し、感想や制度の改善すべき点などについて議論を深めた。「裁判員制度が重たく触れてはいけないものというイメージを払拭(ふっしょく)しなければならないのでは」「裁判官が非常に話しやすい雰囲気をつくってくれてやりやすかった。良い経験をさせてもらった」といった実体験に基づいた意見が多く出され、参加者は学びを深めた。
弘前大学の平野潔教授によるこの試み、いろいろな示唆を与えてくれる。
平野先生は裁判員制度と地域司法という2つの枠組みでご研究されているようだが、他にも法教育というワードもリサーチマップには見られる。
→https://researchmap.jp/k-hirano
もちろんシンポの対象たる裁判員制度自体にとっても、このシンポの内容が貴重な検討素材の一つであることは言うまでもないが、私の興味関心からは以下のような点が注目される。
裁判員と法教育との関係は元々切っても切れない関係ではあり、この間発展してきた法教育のフィールドの中でも裁判員に関する部分は重要なパートであることに変わりはない。
そしてこのコロナ禍の下、大学教育ですっかりおなじみとなったZoomにより、大学に限らず法学・法曹の側から社会に向けての情報発信が可能となったこと、そしてそれが弘前という地方都市から全国に向けてオンラインシンポジウムという形での実施も可能となったことは、今後の日本各地の学問シーンの方向を指し示すものであろう。
新型コロナウィルスの悪しき影響はもちろん大きいのだが、反面、情報化が叫ばれても進まなかった多くの分野で否応なしに情報技術(IT)の活用が進み、それに伴って学問その他の内容も発展する可能性が顕在化してきた。さらにはネットワーク環境の不完全さも改めて浮き彫りになり、その面でも改善も否応なしに進んでいる。願わくば、司法のIT化も、それを追い風に良い方向に進んでいってほしいと思うのだが。
ペストがルネッサンスを花開かせたというところまでは行かなくても、新型コロナウィルスが時代の進化を後押ししたということになるのであろう。
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