Book: #日没 #桐野夏生
今年読んだ53冊目は桐野夏生の日没
表現の自由って大事だなーという道徳副読本のような。
あるいは、いっとき話題となっていた図書館戦争 LOVE&WAR 別冊編 9 (花とゆめコミックス)のようともいえるか。
色々な要素が詰め込まれているが、その要素を最後に一挙に回収している。その回収の仕方が、つじつま合わせっぽい感じがして勿体ない気もする。
ちょっと前に、京大の先生がSM画像を研究成果として大学のウェブサイトに上げて、苦情を受けた大学が削除して謝罪するという事件があった。大学だけに学問の自由・大学の自治という論点ももちろんあるが、表現の自由という観点では、不快なもの、感情をネガティブにゆすられる作品というものも表現行為の一つであり、甘んじて批判は受けるものの、その批判を受けること自体が芸術行為であったりする。それは単に性的な道徳観念に関係するものだけでなく、差別に関する表現とか、政治的な論点に関わる表現とかも同様であって、大きな話題となったあいちトリエンナーレ2019などは、表現行為としてはその後の社会の反応も含めて芸術行為としては大成功を収めたと言ってもよいであろう。ただし、芸術行為が大成功を収めれば、そのことがかえって表現の自由に対する締め付けも強まるという皮肉な結果も付いてくるのだが。
そんなことを思い出させる作品であった。
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