Book:ガリレオ裁判
今年読んだ48冊目はガリレオ裁判-400年後の真実 (岩波新書)
なかなか興味深い作品である。
宗教裁判に対するイメージは変わった部分もあれば、ああやっぱりという部分もあるのだが、いずれにしても近代的な意味での裁判ではないことは、けだし当然というところであろうか。
歴史学的に「それでも地球は動いている」と法廷で言うことはなかったろうなとは思うし、解放されてからそのように言ったというのもありそうな話ではない。いかにも作り話ではある。
で、そういう神話的エピソードがなければ、節を曲げなかった不屈のヒーローという話は出てこないので、宗教裁判によってガリレオほどの人が屈服させられた話となり、要は暗黒の中世カトリックということになる。
しかし、本書を読むと、そのような暗黒面で捉えるのは実に一面的であることが分かる。
確かに宗教裁判で無罪放免ということはありえず、悔い改めるか、拷問・投獄・死刑となるのかという2つしかないという点は、ああやっぱりと、中世なんてこんなものと、認識を強めるのだが、同時に日本の刑事裁判は中世なみだという例の悪罵もまた納得感を持って蘇ってくるから悲しい。
それはともかく、異端審問という裁判の機能が本来的に宗教活動であることからすれば、それは当然のことかもしれない。にもかかわらず、妙に主観的・世俗的であるので、そのような宗教活動としての理解に徹することができず、むしろ世俗の裁判、ひいては近代的な意味での裁判を思い描いてしまって失望するという仕組みだ。初めから宗教活動として理解していれば、不思議はないのだ。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- Book:腐敗する「法の番人」(2024.06.30)
- comic:ヒストリエ12(2024.06.29)
- Comic:まんが アフリカ少年が日本で育った結果 ファミリー編(2024.06.28)
- Book:フランス人ママ記者、東京で子育てする(2024.06.27)
- Book:赤と青のガウン オックスフォード留学記(2024.06.23)
コメント