Book:消費者被害の救済と抑止
松本恒雄先生の編集のもと、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカ、ブラジル、中国に及ぶ消費者被害の救済と抑止を論じた書籍が出た。
私は例によってフランス担当。
内容的には、松本先生の企画立案により国民生活センターが科研費申請団体としての資格を得て、その第一号として申請した科研費プロジェクトが元になっている。
執筆者も、その研究協力者と同じであり、国民生活センターの会議室の一角で、毎月のように研究会を開催した成果が、ようやく形になった。
途中経過は、消費者法学会でも、比較法学会でも発表したが、その段階の研究内容は今回の書籍化された内容のごく一部を構成するにすぎない。
基本的なコンセプトは、消費者被害の回復が特定適格消費者団体による集団的被害回復訴訟により、民事的にも道が開かれたわけだが、実のところは極めて少額の被害を回復するにはコストが見合わない重厚な仕組みとなっている。翻って海外の状況を見ると、行政庁が率先して消費者被害の回復のための法的手続を執る国あり、消費者団体でも極めて簡略かつ柔軟な仕組みで消費者被害の集団的回復を実現してきた国あり、直接の被害回復がかなわないときは不当収益の剥奪を行う国あり、さらには解釈論として被害回復をすることが競争法違反状態の解消といえるとする国あり、実に多様である。
日本法を考えるに当たっても、この本から得られる示唆はたくさんあることだろう。
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