インスタの名前で誹謗中傷
発信者情報開示の仮処分例で、興味深いものが報告されている。
インスタの「アカウント名」で誹謗中傷、「投稿ゼロ」でも削除命じるレア決定 東京地裁
詳しくは、上記記事を見てほしいが、要するに、インスタグラムの名前とユーザーネームという二重の表示を利用して、他人と同じ氏名で登録し、ユーザーネームに卑わいな言葉を並べるということをしたらしい。
ユーザーネームはアカウント名であり、URLの一部となる。
例えば、私のユーザーネームは matimura314であり、URLは https://www.instagram.com/matimura314/ となる。
これにYasutaka Machimuraという名前を設定しているので、私を探したい人はこの名前で検索することでmatimura314というアカウントを見つけ出せる。
ところが第三者がDorobo というようなユーザーネームで登録し、名前にYasutaka Machimuraを登録すると、Yasutaka Machimuraで検索すれば私のアカウントの他にDoroboが出てくるという仕組みだ。
ちなみにMachimuraだけで検索すると、同じ名前を持つ多数人が出てくる。
というわけで、これは不可避的な現象なのだが、特に悪意を持って、加害行為の形態として他人の名前とそのイメージを下げるようなユーザーネームを登録するということが、法的に、名誉毀損ないし人格権侵害として認められたということが上記の裁判例のポイントだ。
もちろん、更に進むと、他人の名前で登録してポルノとか反社会的なコンテンツとかを掲載するという方法もあり、これなどは単なる同姓同名で偶然だという言い訳をどう突破するかが鍵となる。
これと似た現象としては、ドメイン名の登録に関して豊富な実例があるだろう。
例えば、著名ブランドと同一または類似のドメイン名を登録し、そのURLでポルノショップを営むとかブランド価値を貶めて、耐えられなくなった本家ブランドに高価で買取を迫るとか、買取を求めないものの使用停止契約を高額の対価で結ぼうとするとか、要するに一種の恐喝に使うのだが、こういうわかりやすいのはドメイン名紛争解決手続で一発解決可能である。厄介なのは、単なる嫌がらせ的な効果しか生ぜず、しかもドメイン名登録者情報が隠されてしまっているような場合だ。
ともあれ、新しいサービスが出てくると、それを悪用する例も出てきて、ネットに共有地の悲劇みたいな事例が積み重なってしまう。解決策は、他人の權利を侵害したらほぼ確実にそのツケを払わされる仕組み作りであろう。発信者情報開示の効率化はその一つだが、プラットフォーム事業者の責任強化ももう一つの方向だ。
| 固定リンク
「パソコン・インターネット」カテゴリの記事
- 生成AIもどんどん賢くなっている(2025.01.16)
- TwitterX:醤油なめ少年の家裁送致(2023.08.07)
- Mook:法律家のためのITマニュアル(2023.07.19)
- ChatGPTをゼミの発表に使った事例(2023.05.08)
- Chat-GPT先生に #天安門事件 とは何か、何人殺され誰が失脚したかを聞いてみた。(2023.03.19)
コメント