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2020/08/29

Book:競争法における「脆弱な消費者」の法理

今年読んだ44冊目は岩本論先生の競争法における「脆弱な消費者」の法理 (佐賀大学経済学会叢書)

 

このブログでも約一年前に紹介してあったが、書評を書く必要上、精読したので、その結果を記す。 

 

ともかく、内容が詰まった論文集であるが、全体として一つのストーリーにまとめ上げられているので、個々の独立した論文と全体の構造とが入り組んでいるので、整理して読み解くのがとても大変であった。

Liser2_20200829142501 脆弱な消費者という概念自体、最近の流行り言葉でもあるのだが、消費者がそもそも脆弱な存在であるところから、消費者は自立すべき存在となると、今度は消費者の中で自立は困難な層を脆弱な消費者と呼び、それもよく考えてみると若者とか老人とか一定カテゴリーの人々だけではなく誰でも脆弱な立場に追い込まれることがありうるとして、回り回って消費者全体が潜在的に脆弱性を抱えているという話になる。

そこで、消費者契約法の改正議論では、つけ込み型の不当勧誘が強化される方向にあるわけで、すでに出来たものとしてはデート商法がある。

岩本先生の本は、これに対して競争法、すなわち独禁法と公正取引委員会の法執行が主たる関心であり、とりわけ景表法が消費者庁所管となってしまった後でも公取が消費者行政に関与すべきこと、それには優越的地位の濫用規制を消費者契約取引にも適用すべきこと、加えて適格消費者団体の民事司法を通じた消費者法実現にも期待されること、さらには消費者教育にも大きな期待を寄せていることなどが書かれている。

そのために、適格消費者団体の財政基盤や活動範囲の拡充を、法的にも制度的にも事実的にも、図っていく必要があるのだ。

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