arret:幼児の逸失利益について定期金賠償が認められた事例
最判令和2年7月14日(PDF判決全文)
4歳の子がトラックにはねられて高次機能障害を負ったという事例で、18歳から67歳までの収入喪失に関する逸失利益を定期金賠償するよう求めて、原審もこれを認めたところ、被告側が定期金賠償は被害者の死亡により支払い義務の終期がくる性質の賠償について認められるものであるから逸失利益には妥当しないなどとして上告した。
最高裁は上告棄却。
一時金による逸失利益の賠償額算定は、不確実な将来予測とフィクションに基づくもので将来現実化した事情と乖離する可能性があり、また民法は一時金でなければならないという規定はおいておらず、かえって定期金賠償を前提とする民訴法117条があるので、損害の公平な分配のためには一時金賠償が妥当な場合もある。
また事故後に被害者が死亡した場合も、その原因が事故当時に存在して近い将来の死亡が予見できる場合でなければ、逸失利益算定に考慮されないのであるから、定期金賠償であっても被害者の死亡時に定期金が打ち切られるとするのは相当ではない。
ということで、本件では定期金賠償によることが相当と認められたのである。
なお、小池裕裁判官の補足意見では、「被害者の死亡後もその遺族等に対する定期金による賠償の支払義務が継続すること」への違和感があるだろうが、その場合も民訴法117条の適用または類推適用により一時金に引き直すことが可能ではないかと述べている。
なお、定期金賠償ということで調べたら、以下のような書籍にあたった。未見だが、そそられる表題ではある。
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