Book:ワイン法
今年読んだ19冊目は、ワイン法 (講談社選書メチエ)
明治大学の蛯原先生といえば、日本のワイン法の第一人者と思われるが、その蛯原先生が一般向けに出されたのがこの『ワイン法 (講談社選書メチエ)』である。
面白くて一晩で読んでしまった。
ワインの歴史とともに、それには疫病とか寄生虫とかとの闘いも含まれるが、税金との闘いもあり、そして今日まで続く品質や産地の表示の問題を軸としたフランス法とEU法の歴史が、このワイン法に現れている。
ワインのラベルには、格付けの許された高級ワインとVin de tableとがあるとか、シャンパーニュはどこでもシャンパンと呼ばれていたのをシャンパーニュ地方の産品に留保する長い戦いがあったとか、さらにはボルドーの範囲やシャンパーニュの範囲確定を巡って近隣同士の争いになるとか、オーバーな言い方になるが、手に汗握る戦いの歴史が描かれている。
そして、今日のフランス社会がデモやストによる民衆の意思表示を民主主義の政策決定に組み入れていることを思い起こさせるが、ワインを飲みたい、安いワインを飲みたい、他方でワインの作り手の利益を守りたいといったことが、民衆のデモ(フランス語ではマニフ)によって動かされてきたのだということを、改めて感じさせる。
ワインの表示の法は、一方では知財であるとともに、他方では消費者法でもある。ワイン表示を最初に保護した立法が、フランスの最初の消費者保護立法であったということが出てきたが、ついこの間まで書いていた論文でちょうどその法律を引用したばかりだったので、大変うれしくなったものである。
ということで、バレンタイン・ディナーでワインを楽しんだ後に読む最良の本だった。
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