Book:大名倒産
大名が江戸時代に借金まみれとなっていたことは知っていたが、ついに返済不能となって倒産するという事態に至ったことがあったかどうかは、寡聞にして知らなかった。浅田次郎氏の小説の中では「断わり」という奥の手により借金をすべてちゃらにするという事が行われていたという。
その歴史的な事実はいずれ調べるとして、小説の中の「断わり」は大口の債権者に対して予め根回しをし、納得を得たうえでお殿様が「断わり」を宣言するのだという。つんぼ桟敷だった中小債権者は寝耳に水で、連鎖倒産の憂き目を見るが、大勢はやむを得ず受け入れるという。現代の倒産法では、さしずめ、プレパッケージ型の会社更生といったところであろうか。
大名家は、いわば地方自治体みたいなものであるから、いずれにしても再建せざるを得ない。借金を返済できない状態、支払不能に陥っていても、利息すら支払えない状態になっても、結局、ズルズルといつまでも待ってもらうしかなく、その一方で領国経営も続けなければならない。そうした状態に耐えられなくなったときに、「断わり」が発生するのだという。
しかし、この本の主人公が殿様となった家は、ズルズルと待ってもらう状態に耐えきれずに「断わり」を宣言するのではなく、倒産を目論んだというのである。より正しい言い方をすれば、いわゆる計画倒産であり、現行法では詐欺破産罪となる行為を密かに準備しているというわけである。
家臣たちに当座をしのげる程度の金を隠匿して、御公儀より改易を命じられれば、その隠し財産を分配し、当主には腹を切ってもらう、これが先代のお殿様の目論見であった。
しかし当代お殿様はなんとか立て直したいと奮闘する。これに貧乏神やら福の神やらが絡んでいく。
物語はテンポよく進むので、引き込まれるように年の瀬の寝不足を加速して一気に読んでしまった。
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