Book:倭の五王
今年読んだ7冊目は倭の五王 - 王位継承と五世紀の東アジア (中公新書)
日本の古代史といえば、大抵は日本書紀と古事記の記述を根本にして、中国等の史料や考古学的な味付けをするというものだが、この本は違う。基本的に紀・記は参考または批判的な取り上げ方にとどめ、中国の魏志倭人伝から宋代の倭国の記録を中心として倭の五王の行動を読み取り、これに同時代の東アジアの国際政治情勢を基礎とする倭国の立場を推し量るという方法で、五王の実像に迫っている。
従って、多くの古代史研究が倭の五王を日本の歴代天皇の誰に当たるのかという点が最大の関心事になっているのに対して、本書は、結局不明ということになっている。というよりも、そもそも比定される対象の雄略天皇までの天皇たちは実在性も疑わしかったり、実在はしてもその関係は統一王朝かどうか怪しく、むしろ2つの王勢力が争っている状態だったりする可能性も高く、日本書紀と古事記の内容も整合しないので、名前が似てるとか日本側史料による関係に当てはめたりして比定してもまあこじつけの域を出ないというのである。
著者の見解では、継体大王から政権が世襲で安定したということであり、その継体大王がそれ以前の王たちと血縁関係は否定されなくても政権の承継がなされたという関係は限りなく否定的に見ているので、リアリスティックな目で見ているということができよう。
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