Book:ダークツーリズム
ダークツーリズムという概念が、様々な軋轢を生みそうなものであることは容易に想像がつく。
例えば、阪神淡路大震災のときの高速道路がなぎ倒された映像は、一生忘れることのできないものであるが、あれをそのまま残すことは出来ないものの、一部でも残そうとすると、それはそれはハレーションが起こる。東日本大震災でもそうした震災遺構を巡る軋轢はたくさんあったし、福島第一原発の存在そのものがそのような軋轢の中心となっている。
そのような自然災害の例だけでなく、人為的な悲劇の遺構も、極めてデリケートな争いの種になる。この本には出てこないが南京大虐殺や従軍慰安婦問題も、その列に加えておくべきであろう。
戦争で、敵の残虐非道という話であれば、解決は困難かもしれないが、まだ分かりやすい。自国の暗い歴史を後世にどう扱うのか、観光のためにどう活用するのか、美化するのか、正当化するのか、単純化するのか、色々と逃げたくなることは、関係者ならばあることだろう。
そんな事を考えながら読んでしまった。
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