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2018/07/15

子の最善の利益保護とADR(家事調停)のあり方

仲裁ADR法学会のシンポジウム「子の最善の利益保護とADR(家事調停)のあり方」は極めて興味深い内容であった。

 報告は、最初に長谷部由起子先生が「家事調停における子供の手続関与〜子の意見聴取のあり方を中心として」と題し、子供の権利条約に基づく子の意見表明の場を確保することの法的な意義と、その論点についての「子どもの意見表明権」に関する国連・子どもの権利委員会の一般的意見での議論を参照し、日本法実務に大きな示唆があるというものであった。
Mamabebe


 具体的には、子の監護紛争において父母以外の者が子の意見を聴取し、それを父母に伝えることが親の責任を自覚させて子の最善の利益に考慮した合意に達する効果があるといい、その意見聴取者は第一に子ども問題の専門家であること、子ども代理人となる法律家の場合は子どもの心理や家庭の状況を把握するため研修を受けた者が担当すべきだとされている。また親へのフィードバックについて、子どもの意見聴取に親が立ち会わないのが原則で、また聴取内容を親に伝えるかどうかも手続代理人の意見を聴取した上で調停委員会が判断すべきだとする。さらに、子の監護に関する調停結果について、子どもに説明をすべきとされている。

 次に家庭裁判所の林賢一元調査官が、調査官の職務から資格、能力など総括的な内容と、子の聴取における調査官の役割の実際のところを明らかにした。特に子どもの意見表明に重要かつ効果的な役割を果たしているという結論であったが、子どもの話した内容を親に話してよいかという問題について、子どもが嫌だと言ったらそれを尊重するし、その点は確認するという。しかし、調査報告内容について、調停委員会には明かされた内容が当事者には伝えられないということがありうるのか、有っていいのかということは、やや疑問であった。当事者たる親にも秘匿する内容ということは有りうるのかもしれないが、それは手続的にどこまで守られるのか、疑問が残る。

 子の手続代理人について報告された池田清貴弁護士の報告も極めて興味深いものであった。子どもの手続代理人の利用は進んでないといわれていたが、それなりに利用はされている。日弁連が把握している限り、これまで70〜80件は実績があるそうだ。また、家裁調査官と子どもの手続代理人との役割分担については、調査官と異なり長期的に反復して子供と接触することや、期日間における状況変化に応じた子どもの側面支援という役割があるという。この点は、しかし、代理人というよりも子どものケアをする人の役割ではないかという感じがした。
 なお、報酬問題については、最近、日弁連が自前の基金を作って国選・私選問わずに援助するようになったという。

 最後に、名古屋大学の原田綾子先生は「子どもの意見表明券の保障と家事調停」と題し、子供の権利条約に基づく子供の権利としての意見表明権を前提とし、その実践的な利益とリスクとを分析された。子どもの権利という視点を中心に据え、調停をうまく進めるために客体として意見聴取されるという視点では駄目だという説明に深く共感する。ただし、子どもの意見表明は権利では有っても義務ではなく、子どもの主体的な地位を認めるということが主体的な関わりをする義務と解されてはならないという点も重要な示唆である。

なお、参考文献

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