司法IT化が4行から17行にパワーアップ
昨年の司法IT化を宣言してその後の検討会につながった未来投資戦略2017から1年、先日閣議決定された今年の未来投資戦略2018では、検討の成果が織り込まれて具体的な記述となり、17行にパワーアップしている。
未来投資戦略2018
具体的には以下の通り。
裁判手続等のIT化の推進
司法府による自律的判断を尊重しつつ、民事訴訟に関する裁判手続等の全面IT化の実現を目指すこととし、以下の取組を段階的に行う。
・まずは、現行法の下で、来年度から、司法府には、ウェブ会議等を積極的に活用する争点整理等の試行・運用を開始し、関係者の利便性向上とともに争点整理等の充実を図ることを期待する。
・次に、所要の法整備を行い、関係者の出頭を要しない口頭弁論期日等を実現することとし、平成34年度頃からの新たな制度の開始を目指し、法務省は、来年度中の法制審議会への諮問を視野に入れて速やかに検討・準備を行う。司法府には新たな制度の実現を目指した迅速な取組を期待し、行政府は必要な措置を講ずる。
・さらに、所要の法整備及びシステム構築などの環境整備を行い、オンラインでの申立て等を実現することとし、法務省は、必要な法整備の実現に向け、来年度中の法制審議会への諮問を視野に入れて速やかに検討・準備を行う。
・また、法務省は、オンラインでの申立て等の実現に向けたスケジュールについて、司法府の環境整備に向けた検討・取組を踏まえた上で、来年度中に検討を行う。
まずは来年度から、現行法のもとでも可能なテレビ会議システム・電話会議システムの活用を拡充して行くとある。これは試行として行われるようだが、重要なステップであろう。次の2022年頃からの運用とされている関係者の出頭を要しない口頭弁論のためには、現行法の下での可能性と限界を見極め、テレビ会議システムを活用することでできること、留意点、必要な技術的ないしはインフラ的な課題を明らかにする必要があるからだ。
実際、現行法の下でも、弁論準備手続であれば法文は音声の送受信と規定していてテレビ会議システムをを予定していないが、禁止しているわけではないので、試行的にテレビ会議を入れることはできる。公開性の問題も、幅広く実験を行うことができよう。当事者本人を参加させて、その陳述を聞くことだってできるわけだ。
あるいは証拠資料としないのであれば、進行協議期日の名の下で、テレビ会議システムを用いた参考人質疑を行なっても良い。
さらに、鑑定人質問では裁判所外のカメラで質問を受けることが現行法でもできるのだから、その場面での留意点を試行的に実験することもできよう。
幅広く試行を行うことにより、カメラアングルの問題やモニター越しのコミュニケーションの問題(の有無)、参加者の管理、記録と調書化の問題、公開性などを潰していき、法律や規則に定めるべき事項と内容を固めて行くことができる。
その次の「オンラインでの申立て等を実現すること」も、関係者の出頭を要しない口頭弁論と同様に「来年度の法制審議会諮問を視野に」と明記されてあるので、その検討は喫緊の課題ということができる。
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