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2018/05/05

Opt-outというのはこういうことをいう

広島県立広島叡智学園が生徒にウェアラブル端末をつけさせて、健康管理をするというニュースは、公権力による個人のプライバシー情報の強制取得だとして批判的に取り上げられ、軌道修正が図られたようである。

Smartwatch_man


学校と生徒という関係では、しばしば管理の必要を盾に本来プライバシーとして守られるべき情報が管理者に提出を強制され、学校の方もそれに慣れきって限度が見られなくなるという弊害が起こりがちだ。今回のケースも、それに属する。
大学レベルでも、教育の成果たる成績と、最終成績に至るまでの学習履歴などにとどまらず、ゼミなどでは出席管理の中で欠席理由を事細かに聞くことがあるし、学生側もそれは当然と思っているフシがある。もちろん言いにくいことは言わないで済ませることもあるし、嘘つかれても普通は分からないと思うが。

そんな中で、健康状態というのも健康診断はやるし、伝染病対策もあるし、あるいはハンディのある学生のケアのためにも前提として障害の有無・程度は知らなければならないし、やはり学校は情報を収集する立場にある。

ウェアラブル端末を生徒につけさせるというアイディアを持ち込んだ先生(?)達の善意とか熱心さとかはとりあえず疑うべくもないが、それが申告するというクッションを置かないで直接情報を取得する点、常時、リアルタイムでの情報取得をする点、いずれも正確性や徹底性という点で理想的に見えたのだが、元々のプライバシー侵害的構造が行き着くところまで行ったということで、流石に反発が大きくなったのであろう。

批判に対して、県教委は無理につけさせることはしないという見解を表明した。大体端末は生徒側に購入させるという話だったので、全員強制なんて原理的に無理があるとも思うが、しかし学校のことだ。全員が買うことになっていると言われて買わされる学用品などたくさん有るので、事実上強制となりえたところだ。

これに対して、無理につけさせることはしないというのであるから、標準の体操服とかのように事実上の強制もしないという理解でよいのであろうか。

そうあってほしいものである。

ちなみに、嫌ならやめても良いというのはopt-outということであり、参加するかしないかは一応、本人の意思に委ねられているということができる。そして学校現場で、ウェアラブル端末を身に着けさせて健康情報等を学校が取得する制度を導入しても、それをやりたくない生徒・親はやらなくても良いとするのであるから、まさしくopt-outである。
そしてopt-outは、積極的に除外の意思を示さないと参加させられるという点で、強制の要素が強いのである。本来は、希望者が参加申し込みをしてきたら参加させるというopt-inが最も意思を尊重した形態なのである。

ただ、この学校のopt-outも救いがあるとすれば、ウェアラブル端末を拒否したとしても学校から追い出されることはないだろうという点である。
このことは当たり前であろう。ウェアラブル端末をつけるかつけないかは自由だと言っておきながら、装着しないなら退学ということになれば、ウェアラブル端末を着けることを生徒に強制している以外の何物でもないからである。

以上の点に同意されたならば、次のような事例にこれを応用してみよう。

あるサービス提供契約に個人情報の提供が条件となっていて、それは同意するかどうか自由、個人情報の提供に同意しないということも可能であるが、もし個人情報の提供に同意しないのであれば、元々のサービス提供契約の締結には進めない。
このような事例で、個人情報の提供は自由意思に任されているとか、opt-outだとかいうことはできるであろうか?

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