Book: ロボット・AIと法
宍戸常寿先生と横田明美先生よりご恵贈いただいたロボット・AIと法、類書はいくつかでてきたものの、著者の顔ぶれからして読むのが楽しみである。
その本書の中で、私の目を引いたのは、「AIと刑事司法」と題する笹倉宏紀先生の論文である。
刑事司法、あるいは刑事訴訟とか刑事裁判と言ったほうが良いのかもしれないが、これをどこまでAIが代替できるのかという問題を立てて、事実認定、法適用、再犯予測、令状審査、起訴猶予などといった場面でのAIの可能性を論じている。
残念ながら民事司法に関する章は立ててもらえなかったので(あるいは立てたけど担当者が書けなかったのか?)、直接民事司法の問題に置き換えるわけにも行かないが、民事司法であってもやはり事実認定と法適用が中心的であり、これに和解交渉が大きな場面として付け加わるところ、事実認定はAIに担わせるのが困難だが法適用はより容易で、しかしそれでも限界はあるという記述は納得の行くところである。
ただ、刑事にせよ民事にせよ、AIなんか使う以前に、手続全般のIT利活用がまず必要なレベルであることは、否定すべくもない。裁判官にAIが代替する以前に、訟廷管理やスケジュールなどのIT利用が必要である。その上で、ICTの利用によるオンライン通信手段の活用も進めて、記録をデジタル化することが先決だ。その上で出ないと、AIに情報をインプットできないのである。
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