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2018/01/30

司法IT化検討会の第4回会議資料について

司法IT化検討会、正式には裁判手続等のIT化検討会と言うが、会議資料は迅速に公開されている。
残念ながら、議事要旨は12月1日のものが最後であって、前回12月27日のものもまだ公開されていないので、議論がどのようにされているかはわからないのだが、最新の会議資料が前回の議論内容を踏まえてのものだとすると、とてもアグレッシブに物事を進めようとしていると期待が持てそうである。

いくつか、メモ的に感想を書き留めておきたい。

Cedh


1. 訴状の提出段階

 ここでは、極めて明確にオンライン申立ての全面的な導入と、訴訟記録の電子化を原則とする方向が打ち出されている。全く賛成である。
 その上で(2) 提出方法については、「ウェブサイト上のフォームへの入力」で良いのではないか。これとその前に例示されている専用システム(サーバー)というのがどう違うかよく分からないが、この後の方に出てくる弁護士以外の本人申立ても可能とするのであれば、結局、一般にアクセス可能なウェブサイトとならざるをえないのではなかろうか。
 もちろんウェブサイトといっても、単純なHTTPのページというわけではなくて、e-filingに適したクラウド技術を用いて構築されるものであろうから、その中で、(3)訴状の作成に必要な事項を確実に記載させる方法とか、(4)の本人申立てにおける支援方法も、技術的な可能性を追求すべきである。今流行のマジックワードでいえば、AIの活用であろうか。

なお、(4)の本人申立てにおける訴状作成支援は、司法書士の本来的業務である。これは訴額に拘わらず、「代書」が可能なのであるから、ここで言われている法的側面のサポートは、弁護士でなければ司法書士である。しかしそれと分離したIT面のサポートであれば、例えば現在家裁が行っている手続案内のように、裁判所の本来業務の一部のようにも思える。それ以外で、既存の機関でこの面を担うべき位置づけにあるのは法テラスである。それ以外に、IT面に限ったサポートを行うというのは、よほど難しい技術を要する申立て方法を構築するのでない限り、あまり必要が無いのではないか。むしろ、構築すべきUIはできるだけユーザーフレンドリーなものとしておく方が健全である。

(5)の本人確認手段については、基本的に民間と同様のレベルでと思うが、民間といっても色々ある。オンラインバンクの本人確認は口座の開設に加えてオンラインIDの事前登録という条件がある上で、さらにワンタイムパスワードなどを要求していて、かなり安全性が高い。
そこまで要求すれば、事実上、弁護士か司法書士に限られるのであろう。それで良いという考え方もあり得る。
しかし本人申立てを許容するのであれば、やはり一度は裁判所窓口に来てもらって、あるいはそこを法テラスにするということもありうるが、本人確認の上でID登録をする必要があろう。その際には本人確認資料の提示も求めることとなる。

(6)の証拠書類等であるが、訴状に添付する段階であれば、当然電子的な写しを提出することになる。委任状については電子署名付き文書を原本とすることが考えられるが、電子署名の利用が一般的でない現状では、紙媒体の写しを提出させる方が利用しやすい。

(7) の公的証明書は、誰の戸籍かということにもよるが、マイナンバーの活用が可能な場面はそのような方向に法改正を進めればよい。登記などの情報連携は、一から制度づくりということになろうか。

(8)の濫用的な訴えの防止は、訴状却下は関係がなく、濫用的という高いハードルを超えれば損害賠償でサンクションがあるというのが現状なので、IT化には関係がない。従前の「濫用的」という判断基準が動かない限り、IT化で訴え提起がしやすくなったとしても、「濫用的」な訴えが増大するということはないであろう。

「濫用的」というワードの意味がわからない人は、最判昭和63年1月26日民集42巻1号1頁を参照のこと。

2. 手数料等の納付段階
 ここは異論がないのではなかろうか。

3. 裁判所における訴状受理・審査段階

(1) は異論がない。
(2)は、被告側も合わせ、オンラインで提起した訴えについての現状を確認できる専用ページが必要である。これは訴え提起の段階でID・PWが発行され、これによるログインをすることでアクセスが可能となり、そこでは提出された書類一切が確認できるとともに、以後の書面提出もそのページ上で行うというやり方が考えられる。被告も、同じページにアクセスできID・PWを訴状送達とともに付与され、同ページ上で答弁書等の提出を行い、両当事者間の直送も同ページに登録して、その旨を電子メールで通知することで足りるとすべきである。

そのほか、(3)は当然賛成で、裁判官の執務上紙媒体が欲しければ、そのための写しを裁判所で用意すればよい。(4)およひ(5)は、技術的にどのようなことが可能かということに依存しているが、基本的には提案に賛成である。

4. 被告に対する訴状の送達段階
 問題が多いのはここであろう。電子化された記録にこだわるならば、被告に紙媒体の訴状等を送達することは可能な限り避けたい。しかし、実際上、訴え提起を了解していない被告に了知させるのはメール等の手段では困難である。結局、(3) で延べられているようなリピータ的被告は別として、現在の訴状送達のように郵便利用を維持すること、あるいは執行官送達も場合により用いることはやむを得ない。

(4)と(6)は、原告側と同様である。

5. 第1回口頭弁論期日の指定段階
(3)については、上述した専用ページによる情報共有が必要である。
しかし、第1回期日の決定に両当事者の都合のすり合わせが必要ということになると、極端なことをいうと被告の同意がなければ訴訟を開始できないということになりかねない。
応訴義務の観点から、当事者の利便性の提供とどう折り合いを付けるかという問題となる。

6. 答弁書の提出段階
 これも、上述した専用ページによる情報共有の中で解決できることである。

7. 第1回口頭弁論期日の段階
 ここでは、確かにe-court 技術の活用により、期日の実質化や原告側の省力化が図られる可能性がある。

以上、次回の資料が楽しみである。

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