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2017/12/10

ITの発展と民事手続

情報法制研究という新しい雑誌の第2号に、表記の拙稿が掲載された。
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この雑誌は、情報法制学会という今年できた学会の学会誌であり、拙稿は創刊号に書く約束をしておきながら書けずに第二号にようやく載せていただいたというものである。

現在のところ、創刊号はウェブサイトにPDFファイルが公開されているが、第二号は載っていない。いずれ掲載されるのか、それとも創刊号だけなのか、サイトの構成からはよく見えないところではある。

というわけで、現在は紙媒体のみによるのだが、その拙稿には以下のような内容を書いた。小見出しに少しコメントを加えて紹介しよう。

1.司法のIT化をめぐる議論
(1)未来投資戦略2017
 ここでは、近時の議論の発端となった閣議決定を取り上げている。
(2)司法制度改革の中での司法のIT化
(3)裁判所の動き
 この2つでは司法制度改革審議会意見書と、これを受けた裁判所の実験、そして民訴法132条の10の創設が実用化に結びつかなかった経緯を述べている。
(4)司法のIT化を求める動き
 ここでは、早野弁護士の主導にかかる「司法制度改革と先端テクノロジィ」研究会が中心である。
(5)本稿の検討対象
2.民事手続のIT利活用の目的
(1)目的の整理
 司法の効率化もさることながら分かりやすく利用しやすい司法という目標が重要だと再確認している。
(2)裁判へのアクセスから法へのアクセスへ
a) 法令・判例情報のオンライン提供
b) オンライン相談
 利用しやすさという点では、e-filing以前に、法へのアクセスの充実が重要と指摘している。
3.判決手続のIT化
(1)e-filing
a) e-filingの意義と日本の現状
b) 諸外国の事情
 e-filingについて、日本では規定の他に見るべき成果が、少なくとも司法については皆無だが、諸外国が進んでいることを指摘している。ただし、それも周知のことであろう。
(2)コート・テクノロジー
 ここは、テレビ会議システムなどそれなりに日本でも利用されているのだが、そのことの理論的なインプリケーションとか問題点などの検討は全く不足している。
4.執行・倒産処理過程でのIT活用
(1)現状
(2)オンライン・オークションの活用とその課題
(3)買受希望者に対する情報開示
 ここは、小見出しから分かるように、BITが活用されているところでは進んでいるが、オンライン公売が先行しているのに裁判所の競売は旧態依然であること、情報開示にもまだやれることはあることを論じている。
5.結びにかえて

というわけで、この論文は現状と期待を表明するものにとどまっている。
これに続く、具体的な検討は、e-filingに関しては、デジタル・フォレンジック研究会のメールマガジンに掲載されたコラムで、不十分なものではあるが、公表した。→明日からサイト上でも公開される予定。

これもまた、小見出しとコメントを紹介する。

1.はじめに
 実はこのコラムでも上記の未来投資戦略2017の話を7月のコラムで取り上げたのだが、今回はそれに引き続いて、文書の送受信に限定してある程度具体的な方向性を検討することにした。
2.ファクシミリに代わりうるもの
 現在FAXで行われている文書の送付・直送は、今すぐにでもこれを電子メールで送受信するようにすればよい。もちろんそれでもマルウェア対策のセキュリティとバックアップは不可欠だが、現在でもそれは行われているはずだ。
 なお、コラムには書き落としたが、これは裁判所規則でも可能と思われる。
3.訴状提出
これは要するに裁判所のフォームに書き込み、ファイルを添付すれば良い。我々がイメージしやすいのは科研費申請だが、それ以外にも電子申請の例はたくさんある。
 問題はIDの取得だが、弁護士会や司法書士会の認証、公的認証の利用のほか、裁判所に初期登録をすることでも足りると思われる。
 なお、裁判はプロセスなので、なりすましは基本的にはしにくい。しかし、被告欠席によりすぐに債務名義が作成されてしまうこともありうるので、その場合は特に厳重な身元確認を要求することも考えられる。
 不正アクセスは防げないとしても、アクセス履歴を当事者がリアルタイムで確認できる通知と履歴をオンラインで得られれば、実害は可能な限り防ぐことができよう。

 このコラムとは離れるが、別の機会に、簡裁の定型訴状のオンライン化が容易で、かつ代理人抜きの本人の申立ての利便性を高めることに寄与すると述べたことがある。これにはさらに、申立て受付にAIロボットを導入することなども考慮してよい。実用化はまだまだ先かも知れないが、方向性としては、本人の訴え提起支援をロボットが担うことはあり得べきである。

4.送達
 当初の訴状送達は、行政庁のような例外的定型的被告を除くと、現在の態勢を大きく買えることはできなかろう。電子内容証明も結局は配達によるのであるから、電子特別送達もその限りでは可能かもしれない。
 それでも、付郵便送達や公示送達を知れているメールアドレスに通知するようにすれば、被告の了知可能性を高めることにもなる。
5.その他の書面の送達・送付
 訴訟中の書類の送受信は、上記の通り、裁判所のクラウドサービスで行うのがよい。その通知をプッシュ型でメールすれば万全だ。

 ちなみに、集団的消費者被害回復裁判手続の簡易確定手続では、届出消費者のリストを電子媒体で、団体と裁判所と相手方とがやり取りすることになっている。しかし、それがUSBメモリなどの提出によることになりそうだが、ここでこそ、裁判所のクラウドサーバー上で書き込む方式が吉であろう。

6.原本のデジタル化
 問題は、以上のような提出をデジタルでオンラインで行いうるとして、現行法のようにプリントアウトした紙媒体を原本とする態勢が残っている限り、効率化は達せられない。ここは思い切ってデジタル情報それ自体を原本とすべきなのだが、これには基本的な発想の転換とか、セキュリティに対する信頼とかがないとダメである。

 ということで、司法のIT利用はどれも枯れた技術の応用にすぎない。司法のAI利用というのは、その上にさらに発展する方向であるので、少なくとも紙媒体からIT利用には早急に移行するべきである。

この他、審理過程についてはさしあたり、以下の左側の書籍を参照されたい。また上記のことも、以下の右側の書籍の最後の章にまとめているので、それもご参照願いたい。

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