Book:日本の右傾化
いつの間にか日本社会が右傾化していて、自民党の憲法改正草案のような復古的で権威主義的な、というより国民が国家に主権を付託する時の条件を記したものという憲法の基本的性格も理解していないような「憲法」草案がまかり通り、ヘイトスピーチが垂れ流され、隣国に対する嫌悪と軽蔑を露わにする出版物が大手を振って売られている現状におののいていたのだが、それを「徹底検証」するということなので、読んでみた。
中は結構冷静で、例えば樋口直人氏は、排外主義のうち対外関係と外国人排斥という2つの側面で右傾化したかというと、一応右傾化したといえる現象はあるが、例えば戦後70年の安倍談話も村山談話を否定することはできず、元慰安婦への事実上の補償でも河野談話を否定することはできず、要するにアメリカが怖くて右傾化には歯止めが効いている。そして外国人排斥も、ヘイトデモに対するカウンターが圧倒しており、反ヘイトスピーチの市民社会の動きが立法にも結実していたということで、必ずしも右傾化が顕著というわけではないと言う。
また、自民党の右傾化ということについて中北浩爾氏は、憲法改正草案や外交安保政策などに自民党の右傾化が現れているが、それは「戦後レジーム」の枠内での揺り戻しにとどまり、小選挙区制による派閥の衰退や民主党という左の存在に対抗するための右傾化であって根は浅いという。
有権者の右傾化に関しても、竹中佳彦氏は「右傾化」していると断定できる証拠はないとしている。
ということで結構意外な結論となっている。
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